マッチングアプリでの約束破り デートのドタキャンは法的にどこまで責任を問えるか

1 はじめに

近年、マッチングアプリの利用が非常に一般的になり、素敵な出会いを求めて活動している方は多いでしょう。
しかし、その手軽さゆえに、約束のキャンセル、いわゆる「ドタキャン」に遭遇し、不快な思いをしたり、時間や費用を無駄にしてしまったりするケースも増えています。
特に、デートの約束が直前で反故にされた場合、精神的なショックはもちろんのこと、キャンセルできない飲食店や交通機関の費用など、無視できない損害が発生することもあります。
このような約束の反故は、単なるマナーの問題として片付けて良いのでしょうか。
この問題に、法律的な視点から切り込んで解説します。

2 この記事でわかること

この記事を読んでいただくことで、マッチングアプリ上での約束が法的にどのような意味を持つのか、そしてドタキャンという行為によって発生した損害に対して、法的にどのような対応が考えられるのかがわかります。
特に、損害の回復を求める際に不可欠となる、証拠を保全し、相手に正式に意思表示をするための具体的な方法について理解を深めていただけます。
法律の専門用語を交えながらも、具体的な対処法に焦点を当てて解説しますので、もしあなたが同様の被害に遭われた場合の一助となることを願っています。

3 デートの約束が反故にされた事例

これはあくまで架空の事例ですが、実際に起こり得る状況として読み進めてください。

会社員の佐藤さん(仮名)は、マッチングアプリで知り合った田中さん(仮名)と意気投合し、数週間にわたるメッセージのやり取りを経て、初めてのデートの約束を取り付けました。
デートは土曜日の夜、人気のレストランでのディナーです。
佐藤さんはこのデートのために、普段は着ない少し高価な新しい服を購入し、田中さんとの会話を盛り上げるために話題のリサーチも入念に行いました。
レストランは、特に予約が難しい人気店だったため、佐藤さんが事前にクレジットカードで二名分のコース料理を予約し、その代金として一万二千円を支払っています。
予約ポリシーに基づき、前日の午後五時を過ぎてのキャンセルは全額がキャンセル料として発生することになっていました。

デート当日、佐藤さんは約束の一時間前に現地近くに到着し、待ち合わせ場所に向かっている最中でした。
そのとき、田中さんからアプリのメッセージで、「急に体調が悪くなってしまい、今日は行けなくなりました。
ごめんなさい」と、一文だけの連絡が入りました。
佐藤さんは、すぐにレストランの予約確認をしようとしましたが、すでにキャンセル不可の時間帯を過ぎています。
また、田中さんとの連絡も、そのメッセージを最後に途絶えてしまいました。

結局、佐藤さんはレストランをキャンセルすることができず、一人で食事をするわけにもいかないため、予約したコース料理の代金一万二千円を無駄にしました。
さらに、デートのために購入した新しい服の費用、往復の交通費なども考えると、合計で二万円以上の金銭的損害が発生しています。
このケースのように、単なる「体調不良」という一言で、相手の出費や手間が無視されてしまう状況は、法的に見てどのように扱われるべきでしょうか。

4 民法から見る約束の重みと損害賠償の可能性

デートの約束のような人間関係に基づく取り決めは、法的に見て「契約」と呼べるのでしょうか。
法的な専門用語を使いながら、この点を掘り下げてみましょう。

まず、契約の成立という用語についてです。
民法上、契約は当事者双方の意思表示の合致によって成立します。
食事の約束のように、明確な書面が交わされていなくても、アプリのメッセージなどで「いつ、どこで、何をする」という合意が確認できれば、法的な意味での契約(特にここでは「諾成契約」にあたると考えられます)が成立したと解釈される余地があります。
ドタキャンという行為は、この成立した契約を正当な理由なく破棄した、つまり「債務不履行」にあたる可能性が出てきます。

次に、債務不履行という用語です。
これは、契約の内容に従った履行がされないことを指します。
デートの約束で言えば、「指定の日時に指定の場所へ行く」という債務を田中さんが履行しなかったことになります。
民法は、この債務不履行によって損害が発生した場合、債権者(この場合は佐藤さん)は債務者(田中さん)に対して損害賠償を請求できると定めています。

この場合の法的根拠となる民法第四百十五条には次のように定められています。

民法第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして、債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

この条文は、約束が守られなかった(履行されなかった)ことによって生じた損害は請求できる、ただし、約束を守れなかったことが相手のせいではない場合は除外するということを示しています。
事例で言えば、「体調不良」がやむを得ない事由であったかどうか、あるいはそれを証明できるかどうかが論点となりますが、単なるメッセージでの申告だけでは、債務不履行責任を免れるのは難しい場合が多いでしょう。

最後に、損害の範囲という用語です。
損害賠償が認められるとしても、全ての出費が対象になるわけではありません。
一般的に損害賠償の対象となるのは、債務不履行と相当因果関係にある損害、つまり、ドタキャンがなければ発生しなかった費用です。
事例では、キャンセルできなかったレストランのコース料理代金や、待ち合わせ場所までの往復の交通費などがこれに該当すると考えられます。
精神的な苦痛に対する慰謝料は、この種の事案では原則として認められにくいですが、悪質な態様や詐欺的な意図が証明できれば、不法行為(民法第七百九条)に基づく請求の可能性もゼロではありません。

5 内容証明郵便作成の重要性

ドタキャンによる損害賠償を請求する上で、内容証明郵便の作成は非常に重要な意味を持ちます。
なぜなら、これは単に請求書を送るという行為以上の法的効果を持つからです。

内容証明郵便とは、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰へ差し出したかを、郵便局が公的に証明してくれる特殊な郵便です。
この書類を作成し相手に送付することで、以下の二つの重要な役割を果たします。

一つ目は、証拠の保全です。
法的な紛争に発展した場合、「言った」「言わない」の水掛け論になることを防ぎます。
内容証明郵便によって、あなたが「いつ」「いくらの損害賠償を請求したのか」という意思表示の事実と内容が、公的に記録として残ります。
これは、将来裁判になった場合や、和解交渉を進める上での強力な証拠となります。

二つ目は、相手方への心理的なプレッシャーです。
内容証明郵便を受け取った相手は、それが単なる個人的なクレームではなく、法的な準備段階に入った正式な請求であると認識します。
この心理的な圧力が、相手方が真剣に対応し、話し合いに応じる動機付けとなることが期待できます。
専門家である行政書士が作成に関与することで、文書の内容が法的に整理され、より説得力のあるものとなり、相手に与える影響力はさらに高まります。

デートのドタキャンという事案において、内容証明郵便の送付は、単なる損害賠償請求の意思表示だけでなく、「あなたは法的な責任を負っている」というメッセージを正確に伝えるための、最初の一歩であり、最も重要な手段となります。

6 書類作成のプロに相談し客観的な視点を取り入れる

ここまで、マッチングアプリのドタキャンという身近な問題に対し、民法の規定を引用しつつ法的な側面から解説してきました。
最終的に損害賠償請求に進むか否かにかかわらず、重要なのは、あなたの抱える問題や発生した損害を、法律に基づき客観的に整理し、文書化することです。

感情的になって相手に連絡を取ることは、かえって事態を悪化させる危険性があります。
また、請求する損害の範囲が法的に妥当でない場合、相手に無視されたり、不当な請求であると反論されたりするリスクもあります。

内容証明郵便をはじめとする法的な書類の作成は、手間や費用を惜しむべきではありません。
法的な専門知識を持つ第三者に行政書士に依頼することで、感情を排した冷静な視点で事実と法的根拠を整理し、正確で説得力のある文書を作成することができます。
この客観的な視点こそが、問題を円満に、かつ法的に解決に導く鍵となるのです。

7 専門家への相談で解決への第一歩を

お読みいただき、誠にありがとうございます。
マッチングアプリでのドタキャン被害は、単なる個人的な不運で終わらせるべきではありません。
その行為があなたの時間、労力、そして金銭に損害を与えているからです。

もしあなたが、今回解説したような約束の反故による被害に遭い、どのように法的な対応を進めるべきかお悩みでしたら、行政書士にご相談ください。
内容証明郵便の作成は、行政書士の最も得意とする専門分野の一つです。
私たちは、あなたのお気持ちに寄り添いながらも、事実関係と法律を照らし合わせ、最も効果的な方法であなたの権利を守るための書類作成をサポートいたします。

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