1 はじめに
マッチングアプリを利用して真剣な出会いを求めている方にとって、交際相手が実は既婚者であったという事実は、計り知れない精神的な苦痛をもたらします。
時間も感情も費やした交際が、相手の嘘によって成り立っていたと知った時の衝撃は、決して軽視できるものではありません。
この種の事案は、単なる倫理的な問題ではなく、法律上の責任が明確に発生する深刻な問題です。
特に、被害を受けた方が被った精神的損害に対して、法的に慰謝料を請求できるのかどうか、具体的な手続きはどうなるのかという疑問を持たれるのは当然のことです。
ここでは、行政書士の専門分野である法的な文書作成の観点から、この問題に対する法的解説と具体的な対処法について丁寧に説明いたします。
2 この記事でわかること
この記事を読み進めていただくことで、マッチングアプリで知り合った相手が既婚者であった場合に、あなたが負わされた精神的苦痛に対して、法律上どのような根拠に基づいて慰謝料を請求できるのかがわかります。
慰謝料請求の法的基礎となる民法上の考え方、そして請求を確実なものにするために不可欠な内容証明郵便や示談書といった文書の作成がいかに重要であるかを理解していただけるでしょう。
法律用語を多少ご存知の読者を想定し、専門的な解説も交えながら、冷静かつ法的な視点で問題解決への道筋を明らかにしていきます。
3 真実を告げられずに交際を続けた架空の事例
これは、特定の個人や団体とは無関係な、あくまで架空の事例です。
会社員の山本さん(仮名)は、一年ほど前からマッチングアプリを利用していました。
そこで知り合った田中さん(仮名)とは、お互いに真剣な交際を望んでいることを確認し、半年間にわたり恋人として交際を続けました。
田中さんは、山本さんに「仕事が忙しい」「家族とは疎遠だ」などと説明し、週末や平日の夜には定期的にデートを重ねていました。
山本さんは、田中さんとの将来を考え、貯金をして結婚資金の準備を始めるほど真剣でした。
ある日、田中さんのスマートフォンに届いた通知を山本さんが偶然見てしまい、そこには「夫」という表示からのメッセージが表示されていました。
問い詰めた結果、田中さんは、自分が既婚者であることを認めました。
また、アプリに登録していたプロフィール情報や交際中に話していた職場の状況なども、多くが虚偽であったことが判明しました。
山本さんは、この裏切り行為により、極度の精神的ショックを受け、不眠症や食欲不振に陥り、仕事にも支障をきたすようになりました。
半年間という期間、愛情と時間を注ぎ込んだ関係が、相手の隠していた真実によって全て無価値になってしまったという絶望感は計り知れません。
山本さんは、この裏切りと精神的苦痛に対して、法的に何らかの責任を追及できないかと考えています。
4 不法行為責任の成立と慰謝料請求の法的根拠
既婚者であることを偽って交際することは、法律上どのように評価されるのでしょうか。
慰謝料請求の法的根拠は、主に民法の不法行為に関する規定にあります。
まず、不法行為という用語について説明します。
民法第七百九条には、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う、と定められています。
既婚者が未婚であると偽って交際し、真剣な交際を望む相手を騙す行為は、平穏な人間関係を形成する自由や、貞操権といった法律上保護される利益を侵害した「故意による不法行為」に該当すると解釈されます。
民法第七百九条には次のように規定されています。
民法第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
この条文に基づき、既婚者であった相手に対しては、その嘘によって山本さんが被った精神的苦痛、すなわち慰謝料の支払いを求めることができます。
次に、共同不法行為という用語です。
既婚者との交際が、その既婚者の夫婦関係を破綻させた場合、交際相手(山本さん)も不貞行為の加害者として責任を問われる可能性があります。
しかし、山本さんの事例のように、交際当初から相手が既婚者であることを全く知らなかった場合、あるいは知るべき状況になかった場合は、交際相手には故意も過失もなかったと判断され、不法行為責任は成立しません。
この点が、慰謝料請求の可否を分ける非常に重要なポイントとなります。
山本さんは被害者として、既婚者である田中さんに対してのみ慰謝料を請求できる立場にあります。
最後に、損害の填補(てんぽ)という用語です。
不法行為が成立した場合、加害者は被害者に生じた損害を賠償し、その損害を埋め合わせる(填補する)責任を負います。
この種の事案における損害のほとんどは、金銭で評価される精神的苦痛(慰謝料)です。
慰謝料の額は、交際期間の長さ、交際の態様(肉体関係の有無)、騙されていた期間、被害者が受けた精神的苦痛の程度、既婚者の悪質性などを総合的に考慮して決められます。
5 慰謝料請求の第一歩となる内容証明郵便
慰謝料請求という法的な手続きを進める上で、内容証明郵便の利用は欠かせません。
この文書は、相手に対してあなたの請求を法的に明確に伝える最初の、そして最も重要な手段となります。
内容証明郵便とは、郵便局が公的に、誰が、いつ、誰に、どのような内容の文書を送ったかを証明してくれる特殊な郵便方法です。
これにより、あなたが慰謝料の支払いを求める意思表示を、相手方に確実に到達させたという揺るぎない証拠が残ります。
内容証明郵便には、以下の要素を盛り込む必要があります。
まず、事実関係の明確化です。
いつ、どこで知り合い、どのような期間交際していたのか、そして相手が既婚者であったという事実をいつ、どのように知ったのかという経緯を整理し、客観的に記述します。
次に、法的根拠の明記です。
前述したような民法の不法行為責任に基づき、相手方の行為があなたの精神的苦痛をもたらした不法行為に該当することを指摘します。
そして、請求内容の提示です。
具体的な慰謝料の金額を明記し、支払期限や振込先口座を指定します。
この金額は、事案の悪質性や裁判例の相場を考慮して慎重に決定する必要があります。
また、期限までに支払いがない場合の法的手続きの移行(訴訟の提起など)を示唆することで、相手方に真剣な対応を促す効果も期待できます。
内容証明郵便の作成は、法律の専門家である行政書士に依頼することで、感情論を排し、法的に正確で抜け目のない、強力な文書を作成することが可能になります。
この文書が、後の示談交渉や、万が一の訴訟手続きにおいても、あなたの権利を守るための決定的な証拠となるのです。
6 結論と専門家への相談の重要性
マッチングアプリでの既婚者による裏切りは、人生設計をも狂わせかねない重大な問題です。
この問題を解決し、精神的な苦痛に対する正当な補償を得るためには、感情に流されることなく、冷静に法的な手続きを進めることが極めて重要となります。
慰謝料請求の手続きは、相手との交渉、そしてそれを円満に終えた後の示談書の作成まで一連の流れとして考える必要があります。
特に示談書は、将来にわたって紛争が再燃しないように、清算条項などを盛り込み、法的に完璧な形で作成しなければなりません。
これらの法的な文書作成は、専門的な知識と経験が必要です。
書類の不備や表現の誤り一つが、あなたの権利を失わせる原因になる可能性もあります。
手間や費用を惜しまず、行政書士のような専門家に依頼し、客観的な視点と専門的な知識をもって、あなたの問題を処理するための助言とサポートを受けることが、迅速かつ適切な解決への近道となります。
7 法的な書類作成は私たち専門家にお任せください
この度は、大変辛い状況の中、この記事をお読みいただきありがとうございます。
私たちは、内容証明郵便や示談書、公正証書といった、権利義務や事実証明に関する書類作成を専門とする行政書士です。
マッチングアプリの既婚者問題における慰謝料請求は、一歩間違えると被害者であるあなたが不利になる可能性もある、デリケートな問題です。
私たちは、あなたの状況を詳細にお伺いし、最も適切な法的手続きと、交渉を優位に進めるための文書作成を代行いたします。
あなたの精神的苦痛を金銭的な補償という形で解決に導くために、全力でサポートさせていただきます。
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