マッチングアプリで運命の出会いを探していたはずが、信頼していた相手が実は既婚者だったという事実に直面すると、言葉にできないほどの虚無感と怒りに襲われるものです。将来を約束し、真剣に交際を続けてきた方であれば、そのショックはなおさら深いでしょう。しかし、悲しみに暮れる一方で、現実的な不安も押し寄せてきます。自分は騙された被害者なのに、相手の配偶者から不倫相手として訴えられてしまうのではないか、あるいは、嘘をついて自分を傷つけた相手に責任を取らせることはできるのかという疑問です。この記事では、行政書士の立場から、マッチングアプリで既婚者に遭遇してしまった際の法的リスクと、あなたが取るべき最善の対処法について、分かりやすく紐解いていきます。
この記事でわかること
騙された側が慰謝料を請求されるリスクの有無
相手に配偶者がいることを知らずに交際していた場合、法的にどのような守りがあるのかを解説します。
嘘をついていた相手へ慰謝料を請求するための条件
独身だと偽っていた相手に対して、貞操権の侵害として責任を追及できる具体的なケースを紹介します。
行政書士がサポートできる具体的な解決手段
内容証明郵便の送付や示談書の作成など、裁判をせずに問題を解決するための専門的な活用法をお伝えします。
裏切りが発覚した直後に絶対に避けるべき行動
相手が既婚者だと分かった瞬間は、どうしても感情が爆発してしまいがちです。しかし、ここで自暴自棄な行動に出てしまうと、あなたが本来持っているはずの正当な権利を失いかねません。例えば、相手の配偶者にいきなり電話をして事実をぶちまけたり、相手の職場に連絡して既婚であることを暴露したりする行為は非常に危険です。たとえ相手がどれほど悪質な嘘をついていたとしても、こうした過激な行動は名誉毀損や業務妨害に該当する恐れがあり、逆にあなた自身が損害賠償を求められる立場に転落してしまいます。まずは深呼吸をして、法律という味方を味方につけるために、静かに事実を整理することに徹してください。
法的な対抗手段として集めておくべき証拠とは
今後、自分を守るため、あるいは相手に責任を追及するためには、客観的な証拠が何よりも重要になります。まずは、マッチングアプリのプロフィール画面を保存してください。特に、独身である旨のチェックが入っている箇所や、独身を前提とした自己紹介文は欠かせません。また、日々のやり取りの中で、独身であると嘘をついていたメッセージや、将来の結婚を匂わせる言葉があれば、それも全てスクリーンショットで残しておきましょう。もし相手を問い詰めて既婚であることを認めた場合は、その際の音声録音や謝罪のメールも有力な証拠となります。こうしたデータの積み重ねが、あなたが誠実に交際していたことを証明する唯一の手段となります。
あなたは相手の配偶者から訴えられる可能性があるのか
不倫による慰謝料請求が認められるためには、相手に配偶者がいることを知りながら、あるいは少し注意すれば気づけたはずなのに肉体関係を持ったという、故意や過失が必要です。マッチングアプリという、本来独身者が利用する場において、相手が巧妙に独身を装っていたのであれば、あなたには過失がないと判断されるケースが多々あります。つまり、あなたが完全に騙されていた被害者であるならば、原則として相手の配偶者に対して慰謝料を支払う法的義務はありません。不当な請求を受けたとしても、まずは落ち着いて、自分に過失がなかった事実を毅然と主張していくことが大切です。
注意しておきたい過失が認められやすい状況
ただし、状況によってはあなたに不注意があったとみなされるケースもあります。例えば、交際中に相手が土日や夜間に全く連絡が取れなかったり、自宅に一度も招いてくれなかったりするなど、既婚を疑うべき不自然な点が多くあった場合です。また、既婚者であると判明した瞬間に、ショックのあまり自暴自棄になり、一度でも関係を続けてしまった場合は、その時点から不法行為が成立してしまいます。発覚した後は、心を鬼にして即座に関係を断ち切ることが、あなた自身の将来を守るための最優先事項となります。
嘘をついていた相手本人への慰謝料請求について
自分を騙していた相手に対しては、貞操権の侵害という構成で慰謝料を請求できる可能性があります。これは、独身であると偽って相手を欺き、性的自由や結婚への期待を不当に踏みにじったことに対する精神的苦痛の賠償です。特に、相手が婚活目的のアプリを利用していたり、親への挨拶や婚約指輪の話を出していたりした場合は、あなたの受けた精神的苦痛は非常に大きいと判断されやすくなります。単なる遊びの嘘ではなく、あなたの人生の決断を狂わせるような悪質な偽装があったのであれば、法的な手段を用いてしっかりと落とし前をつけさせることを検討すべきです。
行政書士が力になれる具体的な解決の道筋
このようなトラブルを解決するために、行政書士は書面作成の専門家として重要な役割を果たします。まず有効な手段となるのが、内容証明郵便による通知書です。これは、あなたが受けた被害の内容や相手の不法行為を指摘し、謝罪や慰謝料の支払いを求める文書を、行政書士の職印を押して相手に送付するものです。個人のメールや手紙とは異なり、法的専門家の名前で届く書面は相手に強い心理的圧力を与え、逃げ隠れできない状況を作ります。多くの場合、この段階で相手は事の重大さを悟り、話し合いのテーブルに着くようになります。
将来のトラブルを防ぐための示談書作成の重要性
相手と話し合いがまとまり、慰謝料の金額や謝罪の内容が決まった後は、必ず示談書を作成しておくべきです。口約束だけで終わらせてしまうと、後から支払いが滞ったり、逆に相手から嫌がらせを受けたりするリスクが残ります。行政書士は、今回の件について今後一切の口外を禁じる守秘義務条項や、お互いに二度と接触しないことを約束する条項、そして万が一支払いが遅れた場合の取り決めなどを盛り込んだ、精度の高い示談書を作成します。これにより、法的にも精神的にも完全に区切りをつけて、前を向いて歩き出すことができるようになります。
弁護士への相談と行政書士への相談の使い分け
最後に、どの専門家に頼むべきかの基準をお話しします。もし相手が最初から支払いを拒否して争う姿勢を見せている場合や、裁判所に訴えを起こしたい場合は、代理人として交渉ができる弁護士の出番となります。しかし、そこまで大ごとにしたくない、まずは冷静な書面を通じて相手の良心に訴えかけたい、あるいは円満に話し合いで終わらせたいという段階であれば、予防法務のプロである行政書士が力になれます。行政書士は、争いを大きくすることなく、書面作成を通じてあなたの権利を守り、平穏な日常を取り戻すためのお手伝いをいたします。
一人で抱え込まずに未来のための相談を
マッチングアプリで既婚者に遭遇してしまった経験は、あなたの自信を奪い、人間不信に陥らせるほど辛いものです。しかし、あなたは何も悪くありません。騙す側に問題があるのであり、あなたが自分を責める必要はどこにもないのです。一人で悩み続けていると、思考が整理できず、さらに深い絶望に沈んでしまうこともあります。まずは、今の状況をありのままにお話しください。客観的な立場から法的リスクを分析し、あなたが最も納得できる形での解決策を一緒に探していきましょう。その一歩が、傷ついた心を癒やし、再び明るい未来を描くための始まりになります。




