離婚の口約束は法的に無効ではないのか 確実に約束を果たす公正証書の重要性

はじめに

この度は、数ある法律関連の記事の中から、本稿にお立ち寄りいただき、誠にありがとうございます。
行政書士として、これまで多くのご依頼者様から、離婚に伴うさまざまなご相談をお受けしてまいりました。

離婚という人生の大きな転機において、当事者同士で冷静に話し合い、新たなスタートを切るための条件を取り決めることは非常に重要です。
しかし、感情的な状況の中で、あるいは「信頼しているから大丈夫」という気持ちから、「養育費は毎月振り込む」「財産は半分ずつ分け合う」といった取り決めを口約束だけで済ませてしまうケースが後を絶ちません。

その時は円満な合意に至ったつもりでも、数年後、状況が変わった時になって、「言った」「言わない」の水掛け論になり、大切な生活基盤が揺らいでしまうという深刻なトラブルに発展することがあります。

本稿は、過去に口約束で離婚の取り決めをされた方、これから離婚を控えており書類作成に迷いがある方を対象に、口約束の持つ法的効力の限界と、将来の安心を確実に手に入れるための方法について、専門家の視点から詳しく解説させていただきます。
法律用語が多少わかる方をターゲットとしておりますので、専門的な知識も交えて丁寧にご説明いたします。

この記事で得られる安心と知識

この記事を最後までお読みいただくことで、あなたは以下の知識と安心を得ることができます。

第一に、離婚時に口頭で取り決めた約束が、法律上どのような効力を持っているのか、そしてなぜそれが危険なのかという理由が明確になります。

第二に、口約束が破られた場合に、それを法的に強制するための最も有効な手段、特に「公正証書」という公的な文書の持つ圧倒的な効力について理解できます。

第三に、取り決めを文書化する際に用いるべき重要な専門用語の正しい意味を知り、行政書士などの専門家に相談する際の前提知識として役立てることができます。

そして最後に、あなたの状況に応じて、どのような手続きや書類の作成が必要なのか、その第一歩を踏み出すための具体的な道筋を知ることができます。
離婚後の生活を安定させるためにも、ぜひ最後までお読みください。

もしもの話 離婚時の口約束が引き起こすトラブルの事例

ここに、架空の事例をご紹介します。これはあくまでフィクションですが、実際に起こり得るトラブルの本質を理解するために役立つはずです。

夫のAさんと妻のBさんは、結婚生活十年を経て、お互いの価値観の相違から協議離婚することになりました。二人の間には小学生のCさんがいます。
話し合いの結果、Aさんが親権を持ち、Bさんが月五万円の養育費を支払うことで合意しました。
財産分与については、共有名義の自宅不動産をAさんが受け取る代わりに、Bさんに対し解決金として三百万円を支払う、という取り決めでした。

しかし、二人は「これから新しい生活を始めるのだから、お互いに信頼し合おう」という気持ちで、これらの重要な取り決めを口頭での確認に留め、離婚届を提出してしまいました。

一年後、Bさんは新しい職場で人間関係のトラブルを抱え、収入が大幅に減少してしまいました。B
さんはAさんに電話で「ごめんなさい、今月は養育費を半分しか払えない」と伝えました。
Aさんは生活設計が狂うため強く反発しましたが、Bさんは「口約束だから、生活が苦しい以上、仕方がない」の一点張りです。

さらに数ヶ月後、Bさんは突然、Aさんに対して内容証明郵便を送付してきました。
その内容は、「自宅不動産の価値は当時よりも上がっている。当時は三百万円で納得したが、改めて財産分与をやり直すべきだ」というものでした。
Aさんは、すべて口約束で終わらせた過去を後悔し、どう対応して良いか分からず途方に暮れてしまいました。

口約束が原因で、Aさんは養育費の滞納という経済的な不安に直面しただけでなく、すでに解決したはずの財産分与についてまで争いに巻き込まれるという、二重の苦しみを抱えることになったのです。
口約束という形のない合意は、当事者の状況や心情の変化という「風」に晒されると、いとも簡単に崩壊してしまう脆さを持っているのです。

法律的な効力はどこまであるのか 専門用語を分かりやすく解説

先の事例でAさんが直面したトラブルは、口約束の持つ限界を端的に示しています。
口約束であっても、法的には「契約」として成立するのでしょうか。

結論から言えば、民法上、契約は当事者の意思表示の合致によって成立します。
これを諾成契約の原則といいます。つまり、離婚時の養育費や財産分与の取り決めも、口頭であっても法律上の契約として成立し、理論上は法的な効力を持つことになります。

しかし、効力があることと、それを強制できるかは全く別の問題です。
法的な効力を行使する上で、口約束には三つの決定的な弱点が存在します。

一つ目は証明の困難性です。
裁判などで争いになった場合、「いつ」「誰が」「何を」「どのように」約束したのかを客観的に証明する証拠がありません。
「言った」「言わない」の水掛け論になれば、裁判所はどちらの主張が正しいのかを判断することが極めて困難になります。

二つ目は強制執行力の不在です。
養育費の支払いが滞った場合、相手の給与や財産を差し押さえるなどして強制的にお金を回収する手続きを強制執行といいます。
しかし、単なる口約束では、この強制執行を行うために必要な債務名義という公的な証明書を得ることができません。
強制執行を行うためには、裁判所の判決や和解調書、あるいは執行証書としての公正証書が必要になるのです。

三つ目の専門用語は時効です。
債権、つまりお金を支払うよう請求できる権利には、一定期間が経過すると消滅してしまう時効という制度があります。
民法第百六十六条第一項には、「債権は、次に掲げるときは、時効によって消滅する」とあり、その一として「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」と定められています。
口約束の内容や取り決めの方法によっては、この時効期間について争いが生じる可能性があり、取り決めが文書化されていないために、権利が失われるリスクが高まります。
時効の成立を阻止するためには、内容証明郵便による請求など、適切な時効の更新手続きを行う必要がありますが、これもまた、元となる約束が不明確では困難が伴います。

行政書士の専門分野である内容証明郵便は、この時効の更新や、相手に約束の履行を強く促すために有効な手段ですが、根本的な解決策としては、すべての取り決めを公正証書として作成しておくことが最も安心で確実な方法なのです。

確かな未来のために 書類作成は費用対効果が高い投資です

離婚後の生活の安心は、子どもの健全な成長にも直結する大切な問題です。
その安心を将来にわたって担保するためには、手間や費用を惜しまず、取り決めの内容を公的な文書として残すことが、非常に費用対効果の高い「未来への投資」であると断言できます。

具体的には、お二人の間で合意した養育費や財産分与などの内容を、公正証書として作成することが最善の策です。
公正証書は、公証役場において、公証人という公務員が作成する文書であり、これに強制執行受諾文言を付すことで、先の専門用語の解説で触れた債務名義としての効力を持つようになります。

公正証書があれば、万が一、相手が養育費の支払いを怠った場合でも、裁判を起こすことなく、すぐに強制執行の手続きに移ることができます。
これは、単なる契約書や私的な文書では得られない、圧倒的な法的安定性と履行の確実性をもたらします。

書面を作成する過程においては、養育費の金額や支払い期間、支払い終期を細かく明確に定める必要があります。
また、財産分与や慰謝料の支払い方法についても、後から争いが起きないよう、曖昧な表現を一切排除しなければなりません。

これらの文書作成は、当事者だけで行うには複雑で、法律的な抜け穴が生じるリスクがあります。
だからこそ、離婚という感情的な問題から距離を置き、客観的な視点と専門的な知識を持つ行政書士などの専門家の助言を求めることが、あなたの人生の安心を確かなものにするための賢明な選択となります。
手間や費用を理由にこのプロセスを省略することは、将来的に何倍もの労力と費用をかけてトラブルを解決するリスクを背負うことにつながります。

今すぐ動くことが安心につながります 専門家への相談でスムーズな解決へ

本稿を最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。あなたは今、口約束の危険性を理解し、公正証書という最も確実な解決策があることを知りました。
この知識を得た今が、次の行動を起こす最適なタイミングです。

過去の口約束に不安を感じている方も、これから離婚の話し合いを始める方も、その不安を確かな安心に変えるお手伝いをさせていただければ幸いです。

私たち行政書士は、お客様から丁寧にお話をお伺いし、お二人の状況に合わせた最適な取り決め案の作成、公正証書作成のための公証役場との連絡・調整、そして取り決めを確実に文書化するためのお手伝いを専門としております。
法律家の客観的な視点と、交渉経験に基づいたアドバイスで、お客様の新たな生活がスムーズにスタートできるよう全力でサポートいたします。

ご相談やお見積もりは随時承っております。
特に、法律問題は時間との勝負となることも少なくありません。
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