1 はじめに
お子様のための養育費は、別居や離婚後の生活において、経済的な基盤となる極めて重要なものです。
元配偶者との間で「毎月○万円支払う」という取り決めを口頭で交わし、信頼関係に基づいてスタートさせるケースは少なくありません。
しかし、口約束は、残念ながら法的な確実性という観点からは多くの危険性をはらんでいます。
時間の経過とともに元配偶者との関係が悪化したり、元配偶者の経済状況が変わったりすることで、「言った、言わない」の水掛け論となり、最終的に支払いが途絶えてしまうリスクが常に付きまといます。
この記事は、既に口約束で養育費の取り決めをした方、これから離婚を控え養育費の取り決めをする方に向けて、口約束が持つ法的リスクを詳細に解説し、行政書士が専門とする公正証書や契約書を作成することで、お子様の養育費を将来にわたって確実かつ安全に確保するための具体的な方法を丁寧に説明します。
法律の用語に多少馴染みのある方であれば、養育費の確保において、文書の「強制執行力」が持つ意味を深く理解していただけるでしょう。
2 大切な子どものための養育費の確実な確保方法
この記事を読み進めることで、あなたは以下の点について深く理解し、大切な子どもの権利を守るための準備ができます。
- 養育費の口約束が、支払い拒否や滞納に直面した際にいかに無力かという法的現実。
- 口約束を強制執行力を持つ公正証書という確実な文書へと昇華させるための手続きの重要性。
- 万が一、元配偶者の支払いが滞った場合に、裁判所の手続きを経ることなく速やかに財産を差し押さえるための具体的な法的知識。
3 口約束だけに頼り養育費の支払いが途絶えたMさんの事例
これは、養育費を口約束だけで済ませた結果、支払いが途絶えてしまった架空のMさん(40代・パート勤務)の事例です。
あくまで事例であることをご承知おきください。
Mさんは夫と離婚する際、当時、夫の経済状況が厳しかったこともあり、「将来、必ず経済的に余裕ができたら、毎月子どもが成人するまで5万円を支払う」という口頭での約束だけで養育費の取り決めを終えました。
夫は「書面にすると大げさになる」と渋ったため、Mさんも夫の言葉を信じて特に文書を作成しませんでした。
離婚後、夫は最初の数カ月は約束通り養育費を支払ってくれましたが、その後、夫が再婚し子どもができたことを機に、徐々に支払いが遅れ始めました。
最終的に、夫は「再婚して生活が苦しくなった」「口約束だから法的義務はないはずだ」と主張し、養育費の支払いを完全に停止してしまいました。
Mさんは、生活のために夫に再度請求を試みましたが、電話にも出てもらえなくなりました。
Mさんは、口約束ではありますが、養育費の支払いを求める裁判を起こそうと考えましたが、弁護士に相談したところ、「口約束だけでは、支払いの詳細な条件や、夫が支払いを怠ったことを証明するのに時間がかかり、すぐに財産を差し押さえることはできません」と告げられました。
Mさんは、口約束の法的無力さを痛感し、子どもの生活費をどのように捻出するかという深刻な問題に直面することになりました。
この事例が示すように、いくら当事者間に信頼関係があったとしても、養育費という長期にわたる経済的な約束は、必ず法的な証拠能力を持つ文書に落とし込む必要があるのです。
4 口約束を法的に無力化させないための三つの知識
Mさんのような状況を避けるために、養育費の取り決めにおいて最も重要となるのは、口約束を「債務名義」という法的な強制力を持つ文書に変換することです。
そのための最良の手段が、行政書士がその原案作成をサポートできる公正証書です。
公正証書を作成する上で、以下の三つの法的概念を理解しておくことが、養育費の確実な確保に繋がります。
- 債務名義(さいむめいぎ): これは、特定の私法上の給付請求権の存在及びその範囲を公的に証明し、法律上の強制執行を可能にする文書のことを指します。簡単に言えば、「この人はこれだけ支払う義務があります」ということを、国が認めたお墨付きの文書です。養育費の場合、口約束や普通の離婚協議書は債務名義にはなりません。しかし、公証役場で作成される公正証書に、後述の執行受諾文言を盛り込むことで、公正証書そのものが債務名義となります。
- 履行遅滞(りこうちたい): これは、債務者(養育費を支払う義務のある側)が、正当な理由なく、約束の期日までに支払いをしなかった状態を指します。Mさんの事例では、夫が支払いを停止した時点で履行遅滞の状態にあります。この履行遅滞が発生した場合、本来であれば支払いを受ける側(債権者)は、裁判所に訴訟を起こし、判決を得るという複雑で長い手続きを経て初めて、強制執行(差し押さえ)が可能となります。しかし、公正証書が債務名義となっていれば、この訴訟手続きを経ることなく、すぐに強制執行の手続きに移ることができるのです。
- 執行受諾文言(しっこうじゅのうもんごん)と強制執行(きょうせいしっこう): 養育費の支払い確保において、最も重要となるのが、この執行受諾文言です。公正証書にこの文言を盛り込むことで、債務者側が養育費の支払いを怠った場合、債権者側は裁判手続きを経ずに、直ちに債務者の財産(給与、預金など)を差し押さえる強制執行を行うことができるようになります。この効力は、裁判で確定した判決と同等のものとなります。
この強制執行の手続きについて定めた法律である民事執行法には、公正証書が債務名義となることが明記されています。
民事執行法第22条(債務名義)には、「次に掲げるものを債務名義とする。」として、その第5号に以下の記載があります。
民事執行法第22条第5号:公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
この条文の示す通り、公正証書に「強制執行に服する旨の陳述」、すなわち執行受諾文言が入っていることが、養育費の確実な確保のための絶対条件となるのです。
5 確実に養育費を支払ってもらうための公正証書原案の骨子
Mさんの事例を教訓として、養育費の確実な履行を目的として作成する公正証書(離婚給付等契約公正証書)の原案には、以下の骨子を盛り込むことが必須となります。
- 養育費支払いの合意: 「債務者(元夫)は、債権者(元妻)に対し、[子の氏名]の養育費として、[子の成人または○歳に達するまで]、毎月[具体的な金額]を[具体的な日付、例:月末]までに、債権者の指定する金融機関口座に振り込む方法により支払うものとする。」
- 支払いの終期と例外規定: 「ただし、子が[高校卒業]または[大学卒業]の時まで支払い義務を負うものとし、また、子が[大学・専門学校等]に進学した場合には、両当事者の協議により支払額を変更することができる。」
- 強制執行の認諾文言(執行受諾文言): 「債務者は、前項の養育費の支払いを怠ったときは、直ちに強制執行に服する旨を陳述する。」
この「強制執行の認諾文言」こそが、口約束を遥かに凌ぐ、最強の法的効力を公正証書に与えるのです。この文言があるか否かで、不払い時の対応が「長い裁判」か「速やかな差し押さえ」かに分かれることになります。
6 子どもの権利を守るために文書作成の専門家の力を頼る重要性
養育費の口約束は、離婚後の心情的な配慮から行われがちですが、それは子どもの将来の経済的な権利を極めて不安定な状態に置くことになります。
Mさんの事例が示すように、一度支払いが途絶えてしまうと、口約束を法的に証明する手間と時間は、当事者にとって大きな負担となります。
養育費の取り決めに関する書類作成は、子どもの生活基盤に関わるものであり、手間や費用を惜しむべきではありません。
なぜなら、その費用は、将来的な養育費の不払いリスクを回避し、子どもの権利を確実に守るための最も重要な「投資」だからです。
行政書士のような専門家に公正証書原案の作成をご依頼いただくことで、単に文書を作成するだけでなく、法的な視点から養育費の金額、支払いの終期、進学時の取り扱いなどの条件を漏れなく明確化し、執行受諾文言を適切に盛り込むことができます。
第三者の客観的な助言は、感情的になりがちな離婚の話し合いを冷静に進め、子どもの権利を最大限に守るための最良の方法です。
7 公正証書作成による確実な養育費の確保を行政書士が支援します
養育費の取り決めにおいて、口約束は法的リスクが高すぎます。
お子様の未来の経済的な安定を確実にするためには、公正証書という、強制執行力を持つ文書の作成が不可欠です。
当行政書士事務所は、内容証明郵便、契約書、そして公正証書原案の作成を専門分野としています。
お客様の個別の状況とご要望を踏まえ、養育費の支払いについて、民事執行法に基づく強制執行が可能な、法的要件を満たした公正証書原案の作成を一貫してサポートいたします。
養育費の支払いの確実性を高め、安心できる生活基盤を築くための第一歩を、ぜひ専門家にご相談ください。
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