フリーランスとしてご活躍されている皆様、日々のお仕事、お疲れ様です。お仕事の依頼を受ける際、業務委託契約書をきちんと確認していますか?
「書面だし、大丈夫だろう」と安易に考えていると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
東京深川行政書士事務所は、これまで多くのフリーランスの方々をサポートしてきました。この記事では、フリーランスの皆様が安心して仕事に取り組めるよう、業務委託契約書の基本的な知識から、作成・確認時の注意点、よくあるトラブル事例とその対処法について分かりやすく解説します。皆様の疑問を解消し、トラブルを未然に防ぐための具体的なヒントをお届けします。
フリーランスの「業務委託契約書」とは何か
業務委託契約書とは、フリーランスの方が企業などから仕事を受注する際に締結する契約書のことです。この業務委託契約書の内容が、フリーランスご自身の権利や義務を定める上で非常に重要な役割を果たします。
口約束だけで仕事を進めるのは危険です。必ず書面で契約を交わし、その内容を隅々までしっかり確認することが大切です。
業務委託契約書の種類とそれぞれの特徴
業務委託契約には、主に以下の2つの種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の業務内容に合った契約形態であるかを確認することが重要です。
請負契約
請負契約は、仕事の完成に対して報酬が支払われる契約です。
例えば、ウェブサイト制作や記事執筆など、特定の成果物を納品することで契約が完了します。成果物を納品すれば契約は完了するため、途中の工程については比較的自由度が高いのが特徴です。
しかし、成果物が完成しなかった場合や、品質が事前に取り決めた基準を満たさない場合は、報酬が支払われなかったり、修正を求められたりする可能性があります。
委任契約(準委任契約)
委任契約(準委任契約)は、業務の遂行そのものに対して報酬が支払われる契約です。
特定の成果物の完成を約束するものではなく、業務を誠実に遂行することが求められます。コンサルティング業務やシステム保守業務などがこれに該当します。時間単価や月額固定など、働き方に応じた報酬形態が取られることが多いです。
業務委託契約書に「これだけは書いてほしい」基本項目
トラブルを未然に防ぎ、スムーズな取引を行うためには、業務委託契約書に以下の項目が明確に記載されているかを確認することが不可欠です。
業務内容(何をどこまでやるのか)
具体的な作業内容、範囲、提供するサービスを明確に記載しましょう。「ざっくりとした仕事内容」では、後から「言った言わない」の争いになりかねません。
例えば、「ウェブサイトのトップページと下層ページ5ページのデザインおよびコーディング」のように、できるだけ具体的に記載することが求められます。
報酬額と支払い条件(いくらもらえるのか、いつ、どうやって?)
報酬の総額、計算方法(固定報酬、時間単価など)、支払い期日、支払い方法(銀行振込など)、源泉徴収の有無などを具体的に記載します。特に、源泉徴収については、クライアント側で手続きが必要な場合があるため、事前に確認し、契約書に明記されているかを確認しましょう。
契約期間(いつからいつまで?)
契約の開始日と終了日を明記します。単発の仕事なのか、継続的な仕事なのかによって記載方法が異なります。継続的な契約の場合には、更新の有無や更新条件についても確認し、記載されているかを確認しましょう。
権利の帰属(作ったものは誰のもの?)
制作物や成果物の著作権、所有権などが、クライアントとフリーランスのどちらに帰属するのかを明確にします。
特にクリエイティブな業務では、この点が後々のトラブルに発展しやすいポイントです。納品後に自身のポートフォリオとして成果物を使用する権利の有無なども確認しておきましょう。
秘密保持義務(知った情報を外に漏らさない?)
業務を通じて得たクライアントの情報を外部に漏らさないための約束です。どのような情報が秘密情報に該当するのか、秘密保持義務がいつまで続くのかなど、その範囲と期間を確認しましょう。
損害賠償(もし失敗したらどうなる?)
契約違反やミスがあった場合に、どちらがどのような責任を負うのかを定めます。損害賠償の範囲や上限額が明記されているかを確認し、過度な責任を負わされないよう注意が必要です。
契約解除条件(どんなときに契約が終わる?)
どのような場合に契約を解除できるのか、解除時の手続きなどを記載します。例えば、クライアントからの報酬不払いや、フリーランスによる業務不履行など、具体的な解除事由と、解除する際の通知方法などが定められているかを確認しましょう。
合意管轄(トラブルが起きたらどこで話し合う?)
万が一、契約に関するトラブルが発生し、訴訟になった場合に、どこの裁判所で争うかを定めます。通常は、クライアントの本社の所在地を管轄する裁判所が指定されることが多いですが、遠方の場合は注意が必要です。
事例で学ぶ 業務委託契約のトラブルとその対策
ここでは、実際に起こりやすい業務委託契約に関するトラブル事例を3つご紹介し、それぞれの対策について解説します。
事例1 報酬が一方的に減額された「言った、言わない」の落とし穴
ウェブサイト制作の仕事で、当初クライアントと口頭で「30万円」と合意していたにもかかわらず、納品後に「最終的にできたものを見たら、うちの要望をすべて満たしているわけじゃないから20万円にするよ」と一方的に減額を提示されたケースです。
契約書で防ぐには
報酬額、支払い条件は具体的に記載することが重要です。口頭での合意だけでなく、必ず契約書に「報酬額は〇〇円とし、〇〇日までに〇〇の方法で支払う」と明記しましょう。また、追加費用の規定を設けることも有効です。最初の合意内容から追加で作業が発生した場合の費用についても、「別途協議の上、費用を定める」などの文言を入れておくと安心です。
事例2 納期を過ぎても連絡なし 音信不通で報酬が未払い
記事作成の業務で、期日までに原稿を納品したが、クライアントから何の連絡もなく、約束の支払期日を過ぎても報酬が振り込まれないケースです。
契約書で防ぐには
支払い期日と支払い方法を明確にすることが不可欠です。「〇月〇日までに〇〇銀行〇〇口座へ振込」など、具体的に記載しましょう。
加えて、遅延損害金について定めることも効果的です。支払いが遅れた場合の遅延損害金(遅延利息)について、「支払いが遅延した場合は、年〇%の遅延損害金を支払う」といった条項を設けておくと、支払いを促す効果があります。
さらに、契約解除条件と解除時の処理を明確にすることも重要です。クライアントが契約に違反した場合(例 報酬の不払い)に、フリーランス側から契約を解除できる旨や、その際の未払い報酬の請求について記載しておくと良いでしょう。
事例3 急な仕様変更で作業量が倍増 どこまでやるべきか
あるシステム開発の案件で、当初の契約書には「基本的な機能の開発」としか記載されていなかったケースです。
開発途中でクライアントから「こんな機能も追加してほしい」「デザインをすべて変更してほしい」と次々に要望が追加され、当初の予定の倍以上の作業量になってしまったが、追加報酬の話は一切出てこないといった問題が生じました。
契約書で防ぐには
業務範囲を具体的に明記することが最も重要です。「〇〇機能の開発」「〇〇ページの制作」など、どこまでが業務の範囲なのかを詳細に記載しましょう。箇条書きや別紙で添付するのも有効な方法です。
また、仕様変更・追加に関する取り決めをすることも不可欠です。「仕様変更や追加作業が発生した場合は、別途協議の上、追加費用および納期を定める」といった条項を入れておくことで、後から追加報酬を交渉しやすくなります。
必要に応じて、一部業務を他のフリーランスに依頼(再委託)できるかどうかを明記しておくことも、自身の業務負担を調整しやすくなるため有効です。
トラブルが起きてしまったら
もし、予期せぬトラブルに巻き込まれてしまった場合でも、適切に対処することで被害を最小限に抑えることができます。
まず「証拠」を確保しよう
クライアントとのトラブルが発生した場合、最も重要になるのが「証拠」の確保です。契約書、メール、チャット履歴など、クライアントとのやり取りは、すべて保存しておきましょう。
特に、業務内容の指示、納期、報酬に関する内容は重要な証拠となります。また、どのような作業を、いつ、どれくらい行ったのか、具体的に記録しておくことも有効です。スクリーンショットや作業時間の記録なども役立ちます。報酬を請求した記録や、納品した成果物の記録も保管しておきましょう。
クライアントとの交渉、どう進めるか
証拠を確保したら、クライアントとの交渉に入ります。口頭ではなく、メールや内容証明郵便などで、現状の問題点や求める解決策を具体的に伝えましょう。
双方にとって納得できる解決策を探るため、多少の譲歩も視野に入れることも必要です。話し合いが平行線を辿るようであれば、下記のような第三者の介入も検討しましょう。
専門家に相談するタイミングとメリット
フリーランスの方々が安心して活動するためには、法律の専門家を上手に活用することが非常に有効です。
行政書士に相談するメリット
行政書士は、契約書の内容チェック、作成、トラブル時の相談、内容証明郵便の作成など、契約に関する幅広いサポートが可能です。
トラブルを未然に防ぐためにも、契約を締結する前に契約書の内容をチェックしてもらうことで、将来的なトラブルのリスクを大幅に減らすことができます。
法律の専門家として、個別の状況に応じた具体的なアドバイスがもらえます。また、クライアントとの交渉において、法的な根拠に基づいた適切な主張をするためのサポートも期待できます。
弁護士は、訴訟になった場合の代理人として活動できます。より法的な紛争解決に特化しています。
まとめ
東京都江東区に拠点を置く東京深川行政書士事務所は、フリーランスの皆様が安心して仕事に取り組めるよう、契約書作成やリーガルチェックのサポートを行っています。
業務委託契約書について疑問や不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。契約書の作成や確認は、フリーランスとして安定したビジネスを継続するための重要な基盤となります。皆様のビジネスの成功を、法律の面から全力でサポートさせていただきます。