「お金を返してくれない」「約束を破られた」—。そんな身近なトラブルに直面したとき、頭に浮かぶのが「裁判」という選択肢です。しかし、「裁判なんて大げさでは?」「弁護士がいないと無理じゃない?」と、踏み出す勇気が出ない方も多いかもしれません。
そんなときこそ知っておいてほしいのが、簡易裁判所という存在です。これは、比較的軽い民事トラブルを対象とし、ご自身の力でも対応できるよう設計された裁判手続きの場です。東京江東区に拠点を置く東京深川行政書士事務所が、この簡易裁判所における訴訟手続きの基本を分かりやすく解説いたします。身近なトラブルを解決するための具体的な一歩として、ぜひご参考にしてください。
この記事でわかること
- 簡易裁判所についての基本情報
- 訴訟の基本的な流れ
- 訴訟にかかる費用
- 本人訴訟での注意点
簡易裁判所とは何か
簡易裁判所は、裁判所の中でも主に140万円以下の金銭トラブルなど、比較的小規模な案件を扱います。対応するのは日常生活で起こり得る問題が中心で、例えば以下のようなトラブルが該当します。
- 貸したお金が返ってこない
- 家賃の未払い
- ネット通販で購入した商品の不備
- 修理代やサービス代の未払い
身近で、けれど見過ごせない問題に対して、きちんとしたけじめをつけるための手段がここにあります。
訴訟の基本的な流れ
簡易裁判所での訴訟は、いくつかの段階を経て進められます。
訴状の提出
まずは「訴状」と呼ばれる書類を作成し、相手の住所を管轄する簡易裁判所に提出します。この訴状には、トラブルの内容や請求の理由などを具体的に記載します。
期日の通知
訴状が受理されると、裁判所から、裁判の日時(期日)が記載された通知が届きます。この時点で、相手(被告)にも同じ通知が送られます。
口頭弁論(裁判当日)
期日当日は、裁判官の前で、自分の主張や証拠を提出し、相手と対峙します。簡易裁判所では、ご自身が直接出廷して訴訟を行う「本人訴訟」も多く、弁護士がいなくても手続きを進めることが可能です。
和解の打診と証拠調べ
必要に応じて、裁判官が和解を提案したり、追加の証拠提出を求めたりすることもあります。これにより、当事者間の合意形成や、より明確な事実認定が目指されます。
判決または和解
最終的には、裁判官によって判決が下されるか、両者が納得して和解に至れば、トラブルは解決となります。
弁護士なしでもできるのか
簡易裁判所では、法律の専門知識がなくても手続きできるような配慮がなされています。もちろん、不安な場合は弁護士に相談することも一つの方法ですが、あくまでご自身でも訴訟できるということが前提に設計されています。「きちんと伝えたいことがある」という気持ちさえあれば、専門知識がなくても一歩を踏み出すことは可能です。
訴訟にかかる費用
訴訟手続きに必要な費用は、大きく3つに分かれます。
- 収入印紙代 訴額に応じて数百円から数千円程度かかります。
- 郵便切手代 相手方への通知などに使用されます。
- コピー代や交通費などの実費
例えば、10万円の請求であれば印紙代は1,000円ほどです。高額な費用はかからないため、「裁判はお金がかかる」というイメージよりも、ずっと現実的な解決手段となります。
裁判の場で気をつけたいこと
本人訴訟の場合、感情的になると伝えるべき内容がぶれてしまうことがあります。事前に主張したい内容を紙にまとめる、証拠を整理しておくなど、入念な準備が解決への鍵となります。
また、裁判所は中立の立場で進行しますので、「事実に基づいて冷静に伝えること」が何よりも大切です。感情論ではなく、客観的な事実に基づいた主張を心がけましょう。
最後に
「裁判」と聞くと、重苦しく身構えてしまうかもしれません。しかし、簡易裁判所での訴訟は、誰かに頼らなくても、ご自身の言葉で問題と向き合える場所です。
泣き寝入りしないために、納得できる形でトラブルを終わらせるために、あなた自身が前を向くための選択肢として、簡易裁判所という存在があることを、どうか覚えておいてください。一歩を踏み出すのは不安かもしれませんが、その先には、「きちんと声を届けることができた」という小さな達成感が、きっと待っています。