行政書士業界にとって、2026年はまさに歴史的な転換点となります。
長年、実務現場で議論の的となってきた「補助金申請代行」を巡る無資格業者との業際問題。このグレーゾーンとされてきた領域に、ついに法的な終止符が打たれることになりました。
本記事では、改正行政書士法の全貌を「報酬定義の厳格化」「両罰規定の導入」「実務への影響」の3つの観点から深掘りします。
改正の背景:崩壊した「経営コンサル」という免罪符
これまで、多くの無資格コンサルタントが「これは書類作成の対価ではなく、経営コンサルティング料である」というロジックで、行政書士法19条(業務の制限)の潜脱を図ってきました。
しかし、コロナ禍以降の不正受給問題や、低質な「コピペ申請」の乱発により、行政手続きの信頼性は著しく低下しました。事態を重く見た国は「行政手続の適正化」を旗印に、無資格代行の掃討に舵を切りました。
今回の改正は、単なる手続きの変更ではありません。行政書士の独占業務を実質的に再定義し、国家として保護するための強力な措置なのです。
1. 報酬定義の「ブラックボックス」を排除
今回の改正で最も注目すべきは、報酬の解釈が「実質主義」へと完全に移行した点です。
名目の如何を問わない包括的定義
改正法では、以下の名目がすべて「行政書士業務の報酬」に該当することが明文化されました。
- 着手金・事務手数料:
- 申請準備行為に付随する一切の費用。
- 月額顧問料:
- 業務フローに書類作成の補助が含まれる場合。
- 成功報酬:
- 採択結果に連動する報酬も、作成行為への対価とみなされます。
- システム利用料:
- ITツールを通じた申請サポートも、実態が代行であれば対象。
「抱き合わせ販売」の封じ込め
「ITツールの購入特典として申請書作成は無料」とする、いわゆる「0円代行」も厳格に禁止されます。商品の販売価格に実質的な代行コストが含まれているとみなされ、法19条違反として処罰の対象となります。
2. 「両罰規定」の導入:組織的違反への強力な抑止力
これまでの行政書士法違反は、実行した個人に対する罰則が中心でした。しかし、2026年からは「両罰規定」が本格運用され、無資格営業を行う法人そのものに巨額の罰金刑が科されます。
- 法人への波及:
- 組織的に代行を行っていたコンサル会社は、会社ごと刑事罰の対象となります。
- 社会的制裁の直撃:
- 罰金刑以上に処された場合、企業名が公表されます。これは金融機関からの融資停止や取引停止を招き、事実上の「市場退場」を意味します。
これにより、「捕まるのは担当者個人だけ」という法人の甘い認識は、もはや通用しなくなります。
3. 実務への影響:我々に求められる「プロの証明」
この改正により、市場はどのように変化するでしょうか。 一言で言えば、「法に基づいた正当なプロフェッショナルだけが生き残る時代」の到来です。
「コンサル」と名乗れば許された時代は終わり、クライアントも「無資格業者に頼むリスク」をこれまで以上に敏感に察知するようになります。行政書士は、この追い風を活かすと同時に、以下の責任を負うことになります。
- コンプライアンスの徹底:
- 自らの業務フローが法に抵触していないか再確認する。
- 論理的な説明義務:
- 依頼者に対し「なぜ行政書士でなければならないのか」を明確に伝える。
- 付加価値の向上:
- 単なる代行ではない、法律家としての専門的な知見を提供する。
まとめ
2026年の法改正は、行政書士業界にとって大きな浄化作用をもたらします。
グレーゾーンという言葉で誤魔化されてきた市場が終わり、真の専門性が問われるフェーズに入ります。




