1 はじめに
ご自身が投稿されたGoogle口コミに対し、企業や店舗から「名誉毀損にあたる」「業務を妨害された」といった理由で、内容証明郵便が届いたり、損害賠償請求の予告を受けたりすることは、非常に大きな精神的ストレスと不安を伴います。
突然の法的な通知に直面すると、多くの方は感情的になってしまい、冷静な判断ができなくなるものです。
しかし、このような状況で最も大切なのは、感情的な反論を避け、法的な論理に基づいて冷静に対応することです。
相手の主張が法的に妥当なのか、ご自身の書き込みがどの程度の責任を負う可能性があるのかを正確に把握し、その後の訴訟リスクを最小限に抑えるための適切な手段を講じなければなりません。
この記事は、Google口コミを投稿したことで、企業や店舗から法的責任を追及されている方、あるいはそのリスクを感じている方を対象としています。
法律の用語に多少馴染みのある方に向けて、ご自身の書き込みの法的責任の範囲を理解し、相手からの法的文書に対してどのように論理的に対応すべきかを行政書士の専門分野である文書作成の観点から詳細に解説します。
2 訴訟リスクを回避し問題解決へ導くための知識
この記事を読み進めることで、あなたは以下の点について具体的に理解し、相手からの不当な主張に対して適切に対処するための準備ができます。
- 投稿した口コミが名誉毀損にあたるとされた場合でも、ご自身の行為が違法ではないと主張できる法的根拠。
- 相手方から届いた内容証明郵便に対し、どのように反論し、和解交渉へと繋げていくかという文書作成の具体的な戦略。
- 訴訟に発展するリスクを回避するために、行政書士が作成する論理的かつ冷静な回答書が持つ重要な役割。
3 感情的な口コミが原因で企業から損害賠償を請求されたOさんの事例
これは、サービスへの不満を書き込んだことで、企業から損害賠償請求を受けた架空のOさん(30代・会社員)の事例です。
あくまで事例であることをご承知おきください。
Oさんは、あるサービス提供会社P社の対応に強い不満を抱き、Google口コミに「この会社は二度と利用しない」「担当者の対応は最悪で詐欺同然だ」といった、主観的かつ感情的な表現を含む口コミを投稿しました。
数週間後、Oさんの自宅にP社から内容証明郵便が届きました。
その内容は、「Oさんの口コミはP社の名誉を毀損するものであり、業務妨害にあたる。
直ちに口コミを削除し、損害賠償金として30万円を支払わなければ、訴訟を提起する」というものでした。
Oさんは、自分の投稿が「詐欺同然」という強い表現を含んでいたため、法的責任を負うのではないかと大きな不安に駆られました。
しかし、Oさんとしては、実際に受けたサービスへの不満を述べただけであり、一方的に多額の賠償金を支払うことには納得できませんでした。
Oさんは、P社の主張に対して感情的に反論するのではなく、自分の投稿のどの部分に公共性や公益性があったのか、またP社の要求額が法的に妥当なのかを冷静に検討し、訴訟に至る前に論理的な文書で反論し、和解交渉へと持ち込みたいと考え、行政書士に相談されました。
この事例が示すように、口コミの投稿は、たとえ真実であっても、表現方法によっては名誉毀損とみなされるリスクを伴います。
相手からの法的文書に対しては、感情論ではなく、法的な論理で対抗することが、問題解決の鍵となります。
4 書き込みの責任範囲を理解するための三つの法的概念
Oさんの事例のように、口コミの投稿者として法的責任を追及された場合、以下の三つの法的概念を理解し、ご自身の書き込みがどの範囲で違法性を免れるのかを検討することが、適切な反論文書を作成する上での基礎となります。
- 名誉毀損の違法性阻却事由(いほうせいそきゃくじゆう): 書き込みが名誉毀損にあたると認定されても、以下の三つの要件をすべて満たせば、その行為は違法性を失い、不法行為責任を免れることができます。
一 公共の利害に関する事実に係ること(公共性) 二 もっぱら公益を図る目的に出たこと(公益性) 三 摘示された事実が真実であることの証明があること(真実性または真実相当性)
Oさんの書き込みが、P社のサービスにおける消費者被害の警告など、社会の利益に資する目的でなされたと認められれば、違法性がないと主張できる可能性があります。
相手からの内容証明に対し、この違法性阻却事由を論理的に主張することが、反論文書の最も重要なポイントとなります。 - 不法行為責任(ふほうこういせきにん)の範囲: 相手方が請求してきた損害賠償額(慰謝料や逸失利益など)が、法的に妥当な範囲内であるかを検証する必要があります。
単なる感情的な書き込みであっても、その表現の強さや拡散性によっては不法行為責任が認められますが、その損害賠償額は、過去の判例から見て法的な相場があります。
相手からの内容証明に対し、過大な損害賠償額を請求されている場合は、「請求額の算定根拠が不明確であり、法的な相場からかけ離れている」と指摘し、責任の範囲を限定する主張を行う必要があります。 - 内容証明への回答義務と交渉のスタート: 内容証明郵便には、法的に回答する義務があるわけではありません。
しかし、これを無視すると、相手は「交渉の意思がない」と判断し、すぐに訴訟を提起する可能性が高まります。
したがって、内容証明が届いた場合は、法的な論点(違法性阻却事由など)を明確に示し、交渉のテーブルに乗る意思があることを伝える回答書を作成することが、訴訟リスクを回避するための賢明な対応です。ご自身が投稿した口コミの法的責任に関する条文として、刑法にも名誉毀損罪に関する規定があります。
刑法第230条第1項:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
この条文の解説の通り、名誉毀損は刑罰の対象にもなり得る行為であり、訴えられた側は、その責任の重さを認識した上で、冷静に、かつ法的に対応することが求められます。
5 相手方からの内容証明に冷静かつ論理的に反論するための文案
OさんがP社から届いた内容証明郵便に対し、訴訟リスクを回避しつつ、論理的に反論し、交渉を促すための回答書(内容証明郵便で送付)の文例(骨子)を以下に示します。
これは反論を目的とした文書です。
【内容証明郵便の記載例(骨子)】
件名:貴社[〇年〇月〇日付]内容証明郵便に対する回答書
- 相手方の主張の受領と事実の整理
「貴社からの[〇年〇月〇日付]の内容証明郵便を確かに受領いたしました。貴社の主張する名誉毀損および業務妨害については、当職の投稿が実際に体験した不満を表明したものであり、すべてが貴社の主張通りに不法行為を構成するものではないと考えております。」 - 違法性阻却事由の主張
「当職の書き込みは、貴社のサービスに対する客観的な事実に基づいてなされたものであり、他の消費者の利益に資する公共性を有し、かつ、公益を図る目的をもって行われたものであります。したがって、刑法及び民法における名誉毀損の違法性阻却事由が成立する可能性が高いと認識しております。」 - 損害賠償請求額への反論と交渉の提案
「貴社が請求されている[具体的な金額]の損害賠償額は、その算定根拠が不明確であり、法的に妥当な範囲を超えた過大なものであると判断せざるを得ません。当職としては、不必要な訴訟を避けるため、貴社の真摯な対応を前提として、合理的な和解条件について書面による協議を行う意思があります。」 - 最終的な対応の意思表示
「つきましては、貴社において上記の法的論点を再検討された上で、訴訟を避け、協議により解決を目指すのであれば、その旨を[具体的な期限]までに書面にてご回答ください。期限内に合理的な回答が得られない場合は、当職も訴訟への対応を準備せざるを得ません。」
この文書は、相手に対して「感情的に反論するのではなく、法的な知識をもって冷静に対応している」ことを示し、訴訟ではなく和解交渉へと問題を誘導することを目的としています。
6 感情的な反論を避け、文書作成のプロに依頼する客観的な重要性
Google口コミの投稿者として訴えられたとき、最も危険なのは、感情的に反論したり、相手の要求に怯えて安易に応じたりすることです。
ご自身の書き込みの違法性の有無を判断するには、名誉毀損の違法性阻却事由という複雑な法的知識が必要となります。
相手からの内容証明郵便への回答書作成は、手間や費用を惜しむべきではありません。
なぜなら、この回答書の内容が、その後の訴訟の行方や和解の条件を大きく左右するからです。
内容証明の段階で感情的なミスを犯してしまうと、不必要な訴訟に引き込まれるリスクが高まります。
行政書士のような専門家に依頼することで、ご自身の主張を、名誉毀損の違法性阻却事由などの法的概念に基づき、論理的かつ客観的に構成することができます。
第三者の専門家による文書作成は、あなたと相手方との間の感情的な対立を緩和し、冷静な協議による問題解決へと導くための最良の手段です。
7 訴訟リスクの回避と和解交渉を支援する文書作成を行政書士に任せる
Google口コミを巡る法的トラブルにおいて、相手からの内容証明郵便に対する適切な回答は、訴訟リスクを回避し、有利な和解条件を引き出すための最初の、そして最も重要なステップです。
当事務所は、内容証明郵便、契約書、示談書といった権利義務に関する文書作成を専門とする行政書士です。
相手の主張が法的にどこまで妥当なのかを検証し、名誉毀損の違法性阻却事由に基づいた論理的な反論文書の作成を一貫してサポートいたします。
口コミ投稿者として法的責任を追及され、不安を感じている場合は、決して一人で悩まず、冷静な文書作成のプロにご相談ください。
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