「竹楽(ちくらく)」って何?大分・竹田市の竹灯籠イベントの意味・歴史・見どころを完全解説

「竹楽(ちくらく)」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?SNSで見かけた竹灯籠の幻想的な写真?それとも友人からのおすすめ?

竹楽を「竹灯籠のライトアップイベント」と一言で説明することはできます。でも、それだけでは本当のことを半分も伝えられていません。竹楽は、城下町の夜を照らすだけのお祭りではなく、竹田市という土地が100年先の未来に向けて灯し続ける「約束の火」なのです。

この記事では、竹楽とは何か——その誕生の背景、込められた思い、見どころ、そして参加する方法まで、全部まとめてお伝えします。知れば知るほど、あの灯籠の光がもっと特別なものに見えてくるはずです。

竹楽(ちくらく)とは——一言でいうと

「たけた竹灯籠 竹楽(ちくらく)」は、大分県竹田市の城下町で毎年11月に開催される竹灯籠のイベントです。日が暮れると、神社・仏閣・武家屋敷跡・歴史的な石畳の路地など、城下町の各所に約2万本の竹灯籠が一斉に灯され、昼間とはまったく異なる幽玄の世界が現れます。

開催は3日間のみ、入場は無料。来場者は毎年のべ10万人以上にのぼり、竹田市の人口(約2万人)の5倍を超える人々が全国から訪れます。経済波及効果は約2億円ともいわれ、竹田市最大のイベントとして地域に根づいています。

ただ、この数字だけを見ていては、竹楽の本質を見誤ります。竹楽が特別なのは、規模でも集客力でもなく、「なぜこのイベントが生まれ、なぜ続けられているのか」という理念の深さにあります。

竹楽が生まれた理由——荒れゆく里山と、竹田市の危機感

竹楽は2000年(平成12年)に始まりました。その原点には、竹田市が抱えていた深刻な環境問題があります。

竹田市は山林が総面積の65%を占める山あいの町。古くから日本在来の「マダケ」「ハチク」、そして350年ほど前に中国から伝わった「モウソウチク」など、豊かな竹林が広がっています。かつては竹材や竹細工の産地として竹の需要も高く、里山の竹林は人の手で適度に管理されてきました。

ところが、プラスチックや安価な輸入品の普及とともに、竹の需要は激減。管理されなくなった竹林は急速に荒廃し、他の樹木を駆逐しながら里山を飲み込んでいきました。竹田市だけでも竹林面積は540haにのぼりますが、その多くが手つかずのまま放置される状況に陥っていたのです。

こうした現実を前に、1997年、竹田市は農林業・商業・観光を三位一体で活性化するための「竹田市観光振興計画」を策定。そのコンセプトは「エコミュージアム」——生活環境や伝統文化そのものが博物館であるという考え方でした。市民が主役となり、里山を守りながら観光と経済を同時に育てる、という大きな構想です。

その具体的な取り組みのひとつとして、1998年から「岡城・城下町もみじフェスタ」を開催。里山ウォークや自然観察会などを続ける中で、2000年に試験的に3,000本の竹灯籠を武家屋敷の殿町通りに設置したことが、竹楽の第一歩となりました。

来場者の反応は予想をはるかに超えた感動でした。「来年もやってほしい」「もっと増やして」——市民から湧き上がった声と、何より「自分たちのふるさとを守りたい」という市民の強い意思が、翌2001年の単独開催につながります。竹灯籠は12,000本に増やされ、名称も正式に「たけた竹灯籠 竹楽」と定まりました。

以後、毎年2万本をベースに、今日まで一度も途絶えることなく続いています(2025年で第26回)。

竹楽の「竹」は環境再生の象徴——100年かけて里山を守る誓い

竹楽で使われる竹灯籠は、里山で間伐したモウソウチクが原材料です。毎年2万本の竹灯籠を作るために必要なモウソウチクの面積は、約4ヘクタール。竹田市の竹林面積540haの、わずか100分の1にしかすぎません。

「たった100分の1か」と思うかもしれません。でも、主催団体であるNPO法人里山保全竹活用百人会は、その数字をよく知ったうえで、こう言い続けています。

毎年切り続けることで何かが変わる。そのために100年かけても継続し、この運動の輪が幾世代までも繋がることに願いを込めて、1本1本の竹灯籠に火を入れていく。

竹楽の理念の核心は、この言葉に凝縮されています。竹楽は今の世代だけのためのイベントではない。100年後の竹田市の里山を守るための、長い長い行動の積み重ねなのです。

役割を終えた竹灯籠は、廃棄されません。竹炭や堆肥として加工され、里山の土に還ります。竹を伐る→灯籠にする→光と感動を生む→炭や堆肥として土に還る→また竹が育つ——この「循環再生の構造」(ゼロエミッション)が、竹楽の根幹をなしています。また、竹楽関連商品の収益は「里山トラスト」として積み立てられ、長期的な里山保全活動の資金となっています。

竹楽を支える人々——NPO百人会と「化粧師」

竹楽は、NPO法人里山保全竹活用百人会と竹田市が共同で主催しています。百人会は、竹田市内の商工会議所・農協・銀行・郵便局・建設業・商店街などの事業所で構成されるNPOです。名称の通り、地域の「100人」が結集して里山を守るという思いが込められています。

竹楽の本番3日間に向けて、山での伐竹作業・竹の搬出・カット・結束・設置・点火まで、すべての工程に地域住民がボランティアとして参加します。竹田市職員も市職員労働組合として早くから協力してきており、「官民の垣根を越えた協働」が竹楽の実現を支えています。

なかでも注目したいのが、「化粧師(けしょうし)」と呼ばれる人々の存在です。

竹楽の会場には、特に重要な8つのスポットが「竹楽八景」として認定されています。この八景の演出を任されているのが化粧師たちです。三本組みの竹灯籠という極めてシンプルな素材を使いながら、どこに置くか・どこには置かないか——そのバランスによって、光と闇、建物と影のコントラストを操り、昼間とはまったく違う「幽玄の世界」を作り出します。

化粧師の表現は、ただ灯籠を並べる作業ではありません。それぞれの化粧師が、画聖・田能村竹田の水墨画の世界観「陰と陽」を意識しながら、その場所の空気を読んで独自の世界を生み出す、まさにアートの行為です。同じ場所であっても、化粧師が変わればまったく異なる光景が生まれます。

竹楽八景とは——「見てほしい8つの場所」

竹楽会場は城下町全体に広がりますが、特に演出にこだわった8つのエリアが「竹楽八景」として認定されています。それぞれの化粧師が郷土の画聖・田能村竹田の水墨画の精神を受け継ぎ、独自の空間を作り上げます。

代表的な竹楽八景スポット

観音寺・十六羅漢
岩肌に刻まれた16体の石仏が竹灯籠の光に照らされる、竹楽を象徴する風景。多くのカメラマンが集まる最も人気の高いスポットです。写真映えも抜群で、「竹楽といえばここ」という定番の一枚が撮れます。

瀧廉太郎記念館前
「荒城の月」の作曲家・瀧廉太郎ゆかりの地。記念館前の通りが五線譜に見立てられ、灯籠が音符のように配置される繊細な演出が施されます。開催中はコンサートも行われ、音楽と光が交わる特別な時間が訪れます。

広瀬神社
歴史ある神社と竹灯籠の光が織りなす、静謐な空間。参拝しながら竹楽の世界観に浸ることができます。

このほか、武家屋敷の石畳の通り、寺の石段、旧家の庭先など、城下町の各所に竹楽の光景が広がります。すべてを回ろうとすると2〜3時間かかることも。会場マップを手に、ゆっくりと歩きながら八景を制覇してみてください。

竹楽のルール——シンプルを貫く美学

竹楽の竹灯籠には、厳格なルールがあります。それは「引き算の美学」ともいえるこだわりです。

  • 三本組みが基本。竹灯籠は一定の比率で組み合わせた「三本組み」を基本単位とします。
  • 加工は行わない。彫刻・和紙・セロハンなどを貼る加工は基本的に行いません。竹そのものの姿で灯します。
  • 電飾は使わない。灯りはすべて専用のロウソク。LEDや電飾は使用しません。
  • 自然体にこだわる。モニュメントや光を使った文字表現などは「竹楽の竹灯籠」とは区別されています。

なぜこれほどシンプルさにこだわるのか。それは、竹灯籠の光が「自然の素材が生む光」であることを大切にしているからです。加工もLEDもない、ロウソクのゆらぎだけが、城下町の歴史ある風景と溶け合う。その「本物の光」でなければ、竹楽の世界は生まれないと、主催者たちは信じています。

竹楽当日のプログラムと楽しみ方

点灯式——「晩鐘」とともに始まる

毎日16時、城下町に「晩鐘(ばんしょう)」が鳴り響くとともに竹灯籠に火が入ります。この瞬間から、城下町は別の顔を見せ始めます。来場者は「マイ・チャッカマン」を持参すれば、自分の手で竹灯籠に点火する体験に参加できます(チャッカマンは会場内でも販売)。

スローフード屋台村

城下町交流プラザ駐車場エリアに設けられる「スローフード屋台村」では、竹田市の地元食材を使った料理が揃います。赤牛カレー・とうもろこしまんじゅう・竹酒・焼きシイタケなど、竹田でしか出会えない味が並びます。温かい食べ物を手に、灯籠の光の中を歩く時間は格別です。

音楽イベント・コンサート

会場各所では軽音楽ライブやコンサートが開催されます。特に瀧廉太郎記念館前でのコンサートは、「荒城の月」の誕生地という舞台と相まって格別の趣があります。

里山保全館ギャラリー

豊後竹田駅構内に設けられる「里山保全館ギャラリー」では、竹楽・里山保全百年計画のあゆみと理念を伝える展示が行われます。「竹楽とはなにか」をより深く知りたい方には、ぜひここから始めることをおすすめします。

竹楽の基本情報(2025年・第26回実績)

正式名称 たけた竹灯籠 竹楽(ちくらく)
第26回開催日程 2025年11月21日(金)〜23日(日)
点灯時間 16:00〜21:30(最終日は21:00まで)
会場 大分県竹田市城下町一円(JR豊後竹田駅周辺)
入場料 無料
雨天 決行
主催 NPO法人里山保全竹活用百人会/竹田市
問い合わせ NPO法人里山保全竹活用百人会(豊後竹田駅構内)TEL:0974-63-2638
交通規制 城下町内:開催期間中 15:00(一部17:00)〜22:00

アクセス・駐車場

電車 JR豊肥本線・豊後竹田駅下車すぐ。大分駅から約70分。最終日21:25発の臨時列車あり
専用駐車場(無料) 竹田市役所/竹田市総合運動公園/竹田中学校(土日のみ)/豊後大野市清川支所
シャトルバス(有料) 各駐車場〜豊後竹田駅間を運行(16:00〜21:30)。高校生以上200円・小中学生100円・小学生以下無料
注意 竹田駅前駐車場は観光バス・身障者専用。一般車両の駐車は不可

竹楽をより深く楽しむために——知っておきたい3つのこと

①「竹楽」と「竹田城」は別物です

竹楽(ちくらく)と、兵庫県の「竹田城跡」(天空の城で有名な「日本のマチュピチュ」)はまったく別の場所・別のイベントです。検索していると混同されることがありますが、竹楽は大分県竹田市(おおいたけん たけたし)の城下町で行われる竹灯籠のイベントです。

②「竹楽」は読み方も名前も意味深い

「竹楽」を「ちくらく」と読むのは、単に竹の灯りを楽しむ(竹で楽しむ)という意味だけではありません。「竹を楽に(活用して)」「楽しい竹田(楽=たのしい)」「竹の音楽(楽=音楽)」など、複数の意味が重なった命名です。また、竹楽のキャッチコピーは「竹・光・音・出逢い」——そこには、自然・芸術・人との縁が織り重なる場所でありたいという願いが込められています。

③一度行ったら毎年来たくなる

竹楽の会場は毎年ほぼ同じ城下町ですが、化粧師の演出や竹灯籠の配置は毎年少しずつ変わります。「去年と同じ場所なのに、なんか違う」——そう感じるリピーターが多いのも竹楽の特徴。一度体験した人が「また来年も」と繰り返し訪れ、その人が友人を連れてくる。その積み重ねが、10万人という来場者数を支えています。

竹楽が教えてくれること——地域の未来と「続ける力」

高齢化率40%以上、人口減少が続く竹田市。里山の竹林は放置すれば荒廃する。そんな状況の中で、竹楽は「観光集客」というゴールを設定しませんでした。

竹楽の究極の目標は、100年先も竹田市の里山が生きていること。そのために、今の世代が汗をかき、火を灯し、次の世代へと繋ぐ——そのサイクルを止めないことこそが、竹楽の本当の意味です。

3日間の開催期間中に見えるのは、2万本の竹灯籠が城下町を照らす美しい光景です。しかしその灯りの一本一本には、山に入って竹を伐った人、搬出した人、カットした人、結束した人、設置した人、そして点火した人——無数の手と思いが宿っています。

竹楽の光は、里山の光です。

竹田市に惹かれたなら——次の一歩について

竹楽を知り、竹田市という土地の底力に触れると、「一度来てみたい」が「また来たい」に変わり、やがて「ここで暮らしてみたい」という気持ちが芽生えることがあります。実際、竹楽をきっかけに竹田市への移住を決意した方の話も耳にします。

里山の自然・歴史ある城下町・移住者を温かく迎える地域コミュニティ——竹田市は、地方での新しい暮らしを考える人にとって、魅力的な選択肢のひとつです。

移住・定住を本格的に検討する段階になると、住民票の異動・農地や空き家の取得・各種補助金の申請など、複数の行政手続きが同時に発生します。行政書士はそうした手続き全般をサポートする専門家です。「何から始めればいいかわからない」という段階からでも、整理のお手伝いができます。

竹田市・大分県への移住・定住に関する行政手続きでご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

まとめ——「竹楽とは何か?」への答え

竹楽(ちくらく)とは——

    ✅ 大分県竹田市の城下町で毎年11月に開催される竹灯籠のイベント(入場無料・3日間)

    ✅ 2000年に3,000本でスタートし、今や2万本・来場者10万人超に成長した竹田市最大のイベント

    ✅ 荒廃する里山の竹を伐り出し活用することで、竹林の環境を再生する里山保全活動の象徴

    ✅ 竹灯籠は役割を終えると竹炭・堆肥として里山に還るゼロエミッション型の循環構造

    ✅ 神社・仏閣・武家屋敷跡を「化粧師」と呼ばれる演出家が装飾する竹楽八景が圧巻

    ✅ 電飾を使わない専用ロウソクの灯りと、三本組みの竹灯籠というシンプルな美学にこだわる

    ✅ 単なるイベントではなく、100年先の里山を守るための世代を超えた誓い

竹楽を「ただきれいな竹灯籠のお祭り」として来場するのと、「里山への100年の誓いを体感しに来る」として来場するのとでは、目に映る光の意味がまったく変わります。

ぜひ今年の11月、竹田市の城下町でその光を、全身で受け取ってみてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。竹楽や竹田市への旅・移住について、何かお役に立てることがあればいつでもご相談ください。