竹田市観光に若者も呼びたい?コストと現実を知ったうえで、できることを考えよう
「観光客を増やしたいなら、まず若者を呼ぼう」——地方自治体の観光会議で、今日もこんな掛け声が上がっているでしょう。SNSでバズらせる、インフルエンサーに来てもらう、フォトジェニックなスポットを整備する。これらはすべて、若者を呼び込むための定番施策として全国的に広まっています。しかし、ここで一度だけ、冷静に問い直してみてください。「その施策に、いくらかかりますか?」「その若者たちは、2度目も来てくれますか?」
答えは多くの場合、「想像を超えるコストがかかる」「ほとんどが一度きりで終わる」です。それが現実です。にもかかわらず、なぜ地方は若者誘致に巨大な資源を注ぎ込もうとするのでしょうか。本記事ではその問いに真正面から向き合います。前半では、若者を呼ぶことがいかに「コスパの悪い戦略」であるかを、行動心理・費用構造・LTV(顧客生涯価値)の三つの視点から容赦なく解剖します。そして後半では、それでもなお若者を誘致すべき「3つの構造的メリット」を、地域の未来を見据えた冷徹な投資論として提示します。大分県竹田市をはじめとする地方都市の関係者、観光政策に携わる方々に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
序論:若者誘致という「いばらの道」と、本稿が問うこと
観光地が陥る「若者シフト」の幻想
日本の地方自治体において、観光政策の主軸を若者層にシフトする動きが加速しています。その背景にあるのは、主に二つの期待です。一つは「SNS発信力への期待」——若者がSNSに投稿してくれれば無償の広告になるという算段。もう一つは「将来性への期待」——今の若者が将来のリピーターや移住者になってくれるだろうという希望的観測です。
この期待自体は、決して根拠のないものではありません。実際、SNSの口コミが旅行先の選定に与える影響は絶大であり、若者の一投稿が一つの観光地を一夜にして全国区にした例は枚挙にいとまがありません。しかし、ここに巨大な落とし穴があります。「バズった」という現象と「持続的な観光収益が生まれた」という結果は、全くの別物だということです。花火は一瞬鮮やかに夜空を彩りますが、すぐに消えます。地方観光が本当に必要としているのは、静かに、しかし確実に燃え続ける炎なのです。
本稿が提示する「不都合な真実」と逆説的な問い
本稿が最初に提示したいのは、若者誘致にまつわる「不都合な真実」です。それは、若者をゼロから呼ぶためには想像をはるかに超えるコストがかかり、かつ彼らの多くは一度きりで満足してしまう——という、地方観光政策の設計者が直視しなければならない現実です。
しかしその上で、本稿はこう問います。「それほどコストが高く、リピート率も低い若者を、なぜそれでも誘致しなければならないのか?」答えは、短期的な観光消費の回収のためではありません。若者誘致の真の価値は、地域の持続的な存続を支える「長期的インフラ投資」という性格を持つことにあります。この逆説的な構造を理解することが、地方観光政策を次のステージへと進化させる鍵となります。
若者が「その旅行先」を選定する、3つの行動心理
若者誘致のコストを論じる前に、まず彼らが旅行先をどのように選定するのかを理解する必要があります。若者が旅先を決める心理プロセスは、40代以降の世代とは根本的に異なります。その違いを正確に把握することが、施策設計の第一歩です。
理由①:「記号の回収」と「SNSの文脈消費」
現代の若者にとって、旅行先の選定において最も重要な基準の一つは「その場所が自分のSNSにどう映るか」です。フランスの哲学者ジャン・ボードリヤールが提唱した「記号消費」の概念は、現代の若者旅行の実態を驚くほど精確に射抜いています。彼らが消費しているのは、観光地のリアルな空気や食の味そのものではなく、「そこを訪れた自分という記号」であり、それをInstagramやTikTokというメディアで発信した際に得られる「他者からの承認」なのです。
具体的に言えば、観光地を選ぶ基準は「#竹田市 #岡城 #荒城の月」というハッシュタグが、自分の既存のフォロワー層のタイムラインに「違和感なく、かつ少しだけ驚きを与えながら」溶け込めるかどうかです。その観光地が持つ深い歴史的背景や、温泉の効能・成分は、この選定プロセスにおいて二次的な要素に過ぎません。重要なのは「そのハッシュタグに自分が接続することで、自分のタイムラインのナラティブがどう強化されるか」という、極めてメタ的な自己演出の論理です。
この「記号消費」の構造が持つ最大の問題は、一度その場所の「記号としての価値」を回収してしまえば、同じ記号を再び消費することには意味がなくなる点です。同じ場所の同じ写真を再投稿することは、洗練されたタイムラインにおける「手抜き」であり「鮮度の低下」を意味します。つまり、若者のSNS的論理において、リピートとは構造的に動機が失われるように設計されているのです。
理由②:徹底的な「タイパ(時間対効果)」と失敗の回避
若者の旅行行動を理解する上で欠かせないキーワードが「タイパ(タイムパフォーマンス)」です。動画を2倍速で視聴し、音楽のサビだけをかいつまんで聴くこの世代は、旅においても最大限の時間効率を追求します。彼らはTikTokのショート動画やInstagramのリールで「15秒で脳汁が出るシーン」を事前に確認し、それが実際に体験できると確信してから旅行の計画を立てます。旅はもはや「未知の開拓」ではなく、「既に知っている答えを現地で確認する作業」へと変質しているのです。
この行動心理が地方観光にとって持つ意味は非常に深刻です。なぜなら、竹田市のような地域が誇る本物の魅力——長湯温泉の炭酸泉がじっくりと身体に染み渡る感覚、岡城の石垣の前でふと人生の無常を感じる瞬間、城下町の路地で偶然見つけた古い料理屋の暖簾——これらは、15秒のショート動画には到底収まりません。タイパ的な旅の設計の中では、これらの「余白の中にある本質」は「コンテンツとして成立しないもの」として、最初から旅程に組み込まれないのです。
さらに、失敗を極端に恐れるこの世代にとって、「口コミが少ない場所」や「SNSで見かけたことがない場所」は、「行く理由がない場所」と同義になりつつあります。竹田市のように観光地化が進んでいない本物の土地は、タイパ評価の土俵では常にハンディを背負うことになります。これが、若者を呼び込むための情報発信・コンテンツ制作に、莫大なリソースを投入せざるを得ない構造的な理由の一つです。
理由③:アルゴリズムに支配された「偶発性の喪失」
現代の若者が旅行先を「発見」するルートは、かつてとは根本的に変わっています。旅行雑誌やガイドブックを手にとって、気になるページに付箋を貼りながら旅程を組んでいた時代は過去のものです。今や旅行先の多くは、SNSのアルゴリズムによって「おすすめされた」コンテンツの中から選ばれます。つまり、自発的な検索ではなく「レコメンドされた選択肢の中からの選択」が旅行先決定の主流になりつつあるのです。
この変化が地方観光に与える影響は二つあります。一つは、アルゴリズムに選ばれる「バズるコンテンツ」を継続的に生産し続けなければ、そもそも若者の選択肢に入れないという現実です。これは後述するコスト問題と直結します。もう一つは、アルゴリズムによって「出会わされた」観光地に対して、若者が自発的な深い愛着を持ちにくいという問題です。自分で探し、自分の意志で選んだ旅先であれば、そこへの思い入れが自然と育まれます。しかし、流れてきた動画を見て「なんとなく行ってみた」場所に対して、「一生通い続けたい」という強い感情が生まれるかどうかは、大きな疑問符が残ります。
自発性のない出会いからは、自発的なリピートは生まれにくい——これが、アルゴリズム時代の若者誘致が抱える、見えにくいしかし致命的な構造的問題です。
「若者をゼロから呼ぶ」には、莫大なコストがかかる
若者の行動心理を理解した上で、次に問うべきは「その層を実際に呼び込むためにかかるコスト」です。ここでは認知獲得・インフラ整備・投資回収という三つのフェーズに分けて、若者誘致の費用構造を解剖します。
コスト①:認知獲得——「秒単位の奪い合い」に参入する費用
若者の「アテンション(注意)」は、現代において最も希少で高価なリソースです。毎日無数のコンテンツが彼らのスマートフォン画面に流れ込む中で、地方の一観光地が彼らの目に留まるためには、並の努力では全く足りません。
| 施策 | 費用感(目安) | 効果の持続性 | 主なリスク |
|---|---|---|---|
| 大手インフルエンサーへのPR依頼 | 数十万〜数百万円 /1投稿 | 数日〜2週間 | 炎上・ステマ疑惑・PR感の反発 |
| SNS広告(Instagram/TikTok) | 月数十万円〜(継続前提) | 配信停止で即消滅 | アルゴリズム変更による効果激減 |
| フォトジェニックスポット整備 | 数百万〜数千万円 | 陳腐化まで1〜2年 | 景観・雰囲気との不整合 |
| ショート動画コンテンツ制作 | 数十万〜数百万円/本 | バズは一時的 | 継続制作しないと忘れられる |
注目すべきは、これらの施策の効果がいずれも「投資し続けている間だけ続く」点です。SNS広告は配信を止めた瞬間に効果が消え、インフルエンサーの投稿は数週間もすれば検索の海に沈みます。バズとは本質的に持続しないものであり、次の話題が出れば瞬く間に忘れ去られます。「バズを維持する」ためには、より大きな次のバズを仕掛け続けるしかなく、これは終わりのない認知獲得コストの消耗戦に参加することを意味します。
コスト②:インフラ・体験設計のスイッチングコスト
広告で若者を呼び込めたとして、次に必要になるのが受け入れ環境の整備です。若者が旅先で「行きたくない」「使いたくない」と判断する場所の条件を整理すると、以下のようになります。
- フリーWi-Fiの未整備:SNS投稿・地図ナビが困難になるため、訪問の動機を根本から失う
- キャッシュレス非対応:「現金しか使えない」場所は若者に「時代遅れ」という印象を与える
- Web予約・スマホ完結動線の欠如:電話予約必須の宿は最初から選択肢に入らない
- 多言語対応の不足:外国籍の友人を連れた若者旅行者を取りこぼす
- 夜の滞在コンテンツのなさ:日が暮れると何もすることがないと判断されると、日帰りで終わる
これらの整備は一回限りの費用ではなく、システムの更新・維持・スタッフ教育を含む継続的なランニングコストが発生します。特に「古き良き」を売りにする竹田市のような地域が、若者向けのデジタル対応を進めることは、単なる設備投資ではなく、地域の文化的な文脈との折り合いをどうつけるかという、非常に繊細な課題を伴います。過度なデジタル化が、最も大切にすべき40代以降のリピーター層を「雰囲気が変わった」と遠ざける逆効果を生む可能性も、真剣に考慮する必要があります。
コスト③:低いLTVによる「逆ザヤ」リスク
マーケティングの観点から最も重要な数字は「CAC(顧客獲得コスト)」と「LTV(顧客生涯価値)」の比率です。簡単に言えば、一人の観光客を呼ぶためにかかったコストが、その客が生涯にわたって地域にもたらす経済的価値を上回ると「逆ザヤ」が発生し、呼べば呼ぶほど赤字になります。
| 指標 | 若者層(10〜30代) | 40代以降リピーター |
|---|---|---|
| 1回あたりの宿泊・消費額 | 低〜中(コスパ重視) | 中〜高(質への投資) |
| 平均滞在日数 | 1〜1.5泊(効率重視) | 2〜3泊(連泊傾向あり) |
| リピート率(再訪可能性) | 極めて低い(構造的要因) | 高い(行きつけ文化) |
| LTV(10年換算) | ほぼ1回分の消費のみ | 複数回×高単価×複利的拡大 |
| 顧客獲得コスト(CAC) | 高い(常時プロモーション必要) | 低い(口コミ・自走型) |
若者は客単価が低く、リピートもほぼ見込めないため、LTVは1回分の消費に限りなく近い数字になります。一方、認知獲得のための広告費・インフラ整備費・コンテンツ制作費は継続的にかかります。試算によっては「1人の若者観光客を呼ぶためにかけたコスト」が「その客が実際に使った金額」を上回るケースすら起こりえます。これが、若者誘致が陥りやすい「逆ザヤ」リスクの正体です。
それでも若者を誘致すべき「3つの構造的メリット」
ここまで、若者誘致のコスト的・構造的な難しさを徹底的に論じてきました。しかし本稿の真のテーマはここからです。コストが高く、リピートも見込みにくい若者を「それでも誘致すべき理由」が確かに存在します。それは短期の観光消費ではなく、地域の10年後・20年後を守るための「構造的メリット」です。
メリット①:地域のDXを「強制起動」する最強の外圧になる
若者は、旅行者の中で最も要求水準が高い顧客です。「Wi-Fiがない」「現金しか使えない」「スマホで予約できない」——これらの不満を、若者は容赦なくSNSに投稿し、口コミサイトに書き込みます。一般的に見れば「批判」として受け取られがちなこの行動は、地域にとって「無料の課題発見レポート」として機能します。
地方の観光地が長年抱えてきた課題として、「DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れ」があります。予約システムのデジタル化、キャッシュレス決済の導入、多言語Webサイトの整備——これらは「必要だとわかっているが、なかなか動けない」施策の典型です。若者誘致を試みることで発生する「彼らの厳しいフィードバック」は、長年先送りにされてきたDX投資を動かすための外圧として機能します。
そして、ここが最大の要点です。若者対応のために整備したインフラは、若者だけが使うものではありません。スマホで完結する予約システムは40代・50代にとっても使いやすいし、キャッシュレス対応はインバウンド(訪日外国人旅行者)にとっても必須です。つまり、若者誘致を「きっかけ」にして整備したDX基盤は、全世代・全国籍の旅行者にとっての受け入れ環境を底上げする、地域観光の「OS(オペレーティングシステム)アップデート」として機能するのです。若者のために整えたインフラが、最も大切な40代以降のリピーター顧客にとっても快適な環境を生み出す——これは若者誘致が持つ最も実利的なメリットの一つです。
メリット②:「10年後のリピーター」を仕込む、未来への先行投資
40代以降の旅行者が「行きつけ」を持つようになるのは、ある日突然のことではありません。その多くは、若い頃に旅先で体験した「感情が動いた原体験」の記憶が、年齢を重ねた後に不意によみがえり、「もう一度あの場所に行きたい」という気持ちとして表れるのです。20代の頃に訪れた地方の温泉地で感じた「あの夜の静けさ」「あの一杯の地酒の味」「見知らぬ宿のおかみさんの言葉」——これらの記憶は、年齢を重ねるほどに輝きを増し、強烈な再訪動機へと昇華されます。
竹田市に置き換えて考えてみましょう。今、20代の若者が竹田市を訪れ、岡城の石垣の圧倒的なスケールに息を呑み、長湯温泉の炭酸泉が身体にじわじわと染み渡る感覚を初めて体験したとします。その瞬間は、タイパ的な評価では「SNSに映えるコンテンツが少なかった」という結論になるかもしれません。しかし、その記憶は彼の心の奥深くに確かに刻まれます。
15年後、その若者が40代になり、仕事と家庭のプレッシャーに疲れ果てた夜、ふとその記憶がよみがえります。「そういえば、昔あの温泉に行ったとき、何もかも忘れてゆっくりできた気がする」——そしてその記憶が、竹田市への旅を予約させる動機になるのです。今日の若者誘致は、現在の観光消費の回収という視点ではなく、「未来の確かなリピーターを今ここで育てている」という長期投資として位置づけることで、初めてその真の価値が見えてきます。20代の若者に感情的な原体験を植えつけることは、10年後・20年後に最良の顧客となる種を地域に撒くことと同義なのです。
メリット③:「観光客」から「移住・関係人口・事業者」への大化け
40代以降のリピーターと若者観光客の間には、もう一つ決定的な違いがあります。それは「役割の変容可能性」です。40代以降の旅行者は「よいお客様」であり続けることが多いのに対し、若者はある瞬間を境に、単なる「消費者」から「生産者」へと役割をドラスティックに変える可能性を秘めています。
具体的に言えば、竹田市を訪れた20代のデザイナーが「この街の景観を活かした宿をリノベーションしたい」と思い、空き家を借りて自分でゲストハウスを開業するかもしれません。あるいは、長湯温泉の炭酸泉の効能に感動したITエンジニアが「ここでワーケーションをしながら、温泉の魅力をWebで発信するメディアを作ろう」と移住を決断するかもしれません。農業に興味を持つ若者が、竹田の高原野菜の品質に惚れ込み、東京のレストランに竹田産食材を繋ぐ流通ビジネスを立ち上げるかもしれません。
人口減少が深刻化する地方都市にとって、最も切実な課題の一つは「地域経済の担い手の確保」です。観光客として来た若者の中から、二拠点居住者・移住者・地域事業者が生まれることは、観光消費という直接的な収益をはるかに超える、地域の再生という究極の果実をもたらします。若者誘致は「観光政策」という枠を超えて、「地域存続のための人材発掘オーディション」という側面を持つのです。観光客一人一人が、将来の地域の担い手候補です。この視点を持つかどうかが、若者誘致施策の「深度」を決定的に左右します。
結論:若者誘致は「観光政策」ではなく「地域存続への投資」である
総括:若者観光を「単体の黒字化」で評価してはいけない
本稿を通じて論じてきたことを、ここで整理しましょう。若者誘致は確かに「コスパが悪い」。認知獲得コストは高く、客単価は低く、リピート率は構造的に上がりにくい。これは紛れもない事実です。しかし、若者観光の価値を「当該旅行での消費額と誘致コストの差引き(単体の黒字化)」で測ることは根本的に誤りです。
地方観光における若者誘致の価値は、以下の三層構造で捉えなければなりません。
- 第一層(インフラ効果):若者対応で整備したDX基盤が、全世代・全国籍の旅行者の受け入れ環境を底上げする
- 第二層(時間差投資効果):今日の若者体験が、10〜20年後の確かなリピーターとして回収される長期投資
- 第三層(地域再生効果):観光客の中から移住者・事業者・関係人口が生まれ、地域経済の担い手として機能する
この三層を合算した「総合的なLTV」で若者誘致を評価したとき、初めてそのコストは「高い」のではなく「適正、あるいはむしろ低廉な先行投資」として見え始めます。若者一人を呼ぶためにかかった50万円が、15年後に毎年竹田市に宿泊を重ねるリピーターを生み出し、さらに別の移住者の起業支援のきっかけとなったとすれば、その投資対効果は計り知れません。
竹田市が取るべき「ハイブリッド観光戦略」のグランドデザイン
以上を踏まえ、大分県竹田市をモデルとした地方都市が取るべき観光戦略の骨格を提言します。それは「40代以降の行きつけ層で現在のキャッシュを稼ぎ、その利益の一部を若者という未来への不確実性に投資する」という、ポートフォリオ型のハイブリッド戦略です。
ハイブリッド観光戦略のポートフォリオ
| 戦略軸 | 40代以降リピーター(主軸) | 若者層(先行投資軸) |
|---|---|---|
| 役割 | 安定収益・現在のキャッシュ創出 | DX強制起動・未来の顧客育成・担い手獲得 |
| 政策資源の配分 | 全体の約70〜80% | 全体の約20〜30% |
| 主なKPI | リピート率・滞在日数・LTV | DX整備進捗・関係人口数・移住者数 |
| 主な施策 | サブスク温泉パス・湯治リトリート・専門誌タイアップ | Wi-Fi・キャッシュレス整備・移住相談・副業誘致 |
この戦略において最も重要なのは、「若者誘致施策を観光消費の回収で評価しない」という指標設計の転換です。若者誘致のKPIは「観光消費額」ではなく「DX整備の進捗」「関係人口の増加数」「移住者・二拠点居住者の数」に設定すべきです。これにより、若者誘致に投じたコストが「観光」ではなく「地域インフラ整備と人材投資」として正当化され、持続的な予算確保の論拠になります。
一方、現在の収益基盤を支える40代以降のリピーター育成は、引き続き最優先の政策軸であり続けます。長湯温泉のウェルネス・リトリートのブランド化、サブスクリプション型温泉パスポートの導入、二次交通のストレスフリー化——これらの施策で安定した収益を生み出しながら、その余裕資金の一部を若者という「未来への不確実な賭け」に投じる。これが、地方観光の持続可能なポートフォリオ経営の姿です。
まとめ——「目先の黒字」か「地域の未来」か、今こそ問い直す時
本記事で論じてきた要点を改めて整理します。
- ✅ 若者は「記号消費・タイパ・アルゴリズム選択」という行動原理によって、構造的にリピートしにくい
- ✅ 若者誘致には認知獲得・インフラ整備・低いLTVという三重の高コスト構造がある
- ✅ それでも若者誘致にはDX強制起動・未来のリピーター育成・担い手獲得という三層の構造的メリットがある
- ✅ 若者誘致は「観光政策」ではなく「地域存続への長期投資」として評価すべきである
- ✅ 地方都市が取るべきは、40代以降(収益軸)と若者(投資軸)を組み合わせたハイブリッド戦略である
静かに燃え続ける炎を守りながら、次の世代の火種を育てる。それが、大分県竹田市をはじめとする地方都市が、10年後・20年後も輝き続けるために今日から実践すべき観光戦略の本質です。「今すぐバズる施策」と「10年後に実を結ぶ投資」——この二つを同時に、しかし正しい優先順位で進める勇気こそが、地方観光の未来を切り開く鍵となるでしょう。
🌿 竹田市の観光戦略・地域づくりについてご相談ください
「40代以降向けの観光コンテンツを作りたい」「若者に竹田市の魅力を伝えるコンテンツを設計したい」
「ハイブリッド観光戦略の具体的な実践方法を知りたい」——そんなご相談をお待ちしています。
一緒に竹田市の持続可能な観光の未来を描きましょう。
※ 本記事における施策案・数値・費用感はあくまで考察・提言を目的としたものです。実施にあたっては各種法令・予算・地域の実情に合わせてご検討ください。
