竹田市で宿泊施設を開業するには?旅館業・民泊の違いと空き家活用ガイド

大分県竹田市——日本屈指の炭酸泉「長湯温泉」、阿蘇くじゅう国立公園に広がる「久住高原」、そして400年の歴史を刻む城下町。豊かな観光資源を持ちながら、県内最高水準の空き家率を抱えるこのまちで今、空き家を活用した小さな宿づくりの動きが静かに広がっています。「竹田で宿を始めたい」とお考えの方に向けて、地域の魅力と開業に必要な法的知識を、行政書士の視点から整理してお届けします。これから竹田市での宿泊事業を検討される方の、最初の一歩となれば幸いです。

なぜ今、竹田市で宿泊施設の開業が注目されているのか

竹田市は大分県南西部、九州のほぼ中央に位置する人口約2万人のまちです。決してアクセスが良いとは言えない山間地でありながら、ここ数年、移住者やスモールビジネスの開業者が増え続けています。その背景には、竹田市ならではの3つの追い風があります。

追い風①:日本屈指の観光資源

竹田市の最大の強みは、エリアごとに異なる4つの観光資源を持っていることです。

  • 長湯温泉:世界でも稀有な高濃度炭酸泉。ドイツのバートクロツィンゲン市と姉妹都市提携を結ぶほどの「温泉療養地」
  • 久住高原:阿蘇くじゅう国立公園内に広がる雄大な高原。星空観賞や乗馬の聖地
  • 竹田城下町:岡城跡や瀧廉太郎ゆかりの史跡が残る歴史エリア
  • 荻エリア:里山と棚田の風景が広がる、農家民宿に適した地域

これだけ多様な観光資源が一つの市内に集まっている地域は、全国的にも珍しいと言えます。

追い風②:県内最高水準の空き家率と再生支援

2023年時点で大分県全体の空き家率が約19%なのに対し、竹田市は約30%と県内で最も高い水準にあります。一見ネガティブな数字ですが、見方を変えれば「活用可能な物件が豊富にある」ということでもあります。実際、市は2024年10月に「竹田市空き家再生バンク」制度を新設し、老朽化した空き家をゲストハウスやシェアハウスなどに再生する事業者への提供を始めました。

追い風③:竹田式湯治という独自ブランド

竹田市は「竹田式湯治」というウェルネスツーリズム戦略を打ち出しており、温泉付き宿泊施設の利用者には1泊あたり最大500円の給付が受けられる支援制度も整備されています。湯治目的の長期滞在客を呼び込みやすい環境が、市ぐるみで整えられているのです。

竹田市で宿泊施設を始めるための3つの法的選択肢

宿泊料を受け取ってお客様を泊める事業を始めるには、法律上3つの選択肢があります。どれを選ぶかで、許可の難易度も、その後の運営自由度も大きく変わってきます。

① 簡易宿所営業(旅館業法)

ゲストハウス、ドミトリー、農家民宿などが該当します。許可制ですが、年間を通じて営業できるのが最大のメリット。竹田市で空き家を活用した小さな宿を始める場合、もっとも選ばれているのがこの形態です。

② 住宅宿泊事業(民泊新法)

2018年に施行された比較的新しい制度。届出制で手続きはシンプルですが、年間営業日数が180日以内に制限されます。副業として週末だけ運営したい方向けの仕組みです。

③ 旅館・ホテル営業(旅館業法)

本格的な旅館やホテルとして営業する場合の許可。客室数や構造設備の基準が厳しく、初期投資も大きくなります。長湯温泉エリアで温泉旅館を新規開業するようなケースが該当します。

3つの制度を一覧で比較

項目 簡易宿所 住宅宿泊事業(民泊) 旅館・ホテル
手続き 許可制 届出制 許可制
営業日数 制限なし 年180日以内 制限なし
用途地域 制限あり 住居専用地域も可 制限あり
向いている事業 ゲストハウス・農家民宿 週末民泊・副業 本格旅館・ホテル

本格的に宿泊事業を展開したい方には、年間営業可能な「簡易宿所」がもっとも現実的な選択肢となるでしょう。

エリア別・竹田市でおすすめの宿泊事業スタイル

長湯温泉エリア:温泉付き小規模宿で湯治需要を狙う

炭酸泉という独自性の高い泉質を活かせば、首都圏や海外からのウェルネス目的の長期滞在客を取り込めます。温泉権付き物件は希少ですが、見つかれば事業価値は非常に高くなります。

久住高原エリア:コテージ・グランピングで非日常を売る

星空・乗馬・トレッキングなど高原ならではの体験と組み合わせた宿泊施設に向いています。広い敷地が手に入りやすい反面、上下水道や消防対応のハードルが上がる点には注意が必要です。

城下町(竹田)エリア:古民家ゲストハウスでインバウンドを取り込む

豊後竹田駅から徒歩圏内という立地と、歴史的な街並みが両立する希少なエリア。古民家リノベーション型のゲストハウスは、海外旅行客から特に人気があります。

荻エリア:農家民宿で「暮らすような滞在」を提供する

里山の素朴な風景と農業体験を組み合わせた農家民宿は、教育旅行やリピーター層に強い訴求力があります。建物の改修コストを抑えやすいのも魅力です。

空き家再生バンクという「もう一つの選択肢」

竹田市で宿を始めるなら、ぜひ知っておきたいのが「竹田市空き家再生バンク」制度です。通常の空き家バンクが「比較的そのまま住める空き家」を扱うのに対し、再生バンクは老朽化した空き家を、リノベーション前提で事業者に提供する仕組みになっています。

登録された空き家は、飲食店・ゲストハウス・シェアハウス・福祉施設などへの活用を想定しており、登録物件を改修する際には「竹田市空き家Re:Born補助金」の対象となる可能性もあります。物件取得コストを抑えつつ、補助金を活用しながら宿づくりを進められる、竹田市ならではの強力な制度です。

開業前に必ず確認したい4つのチェックポイント

「いい物件が見つかった」と喜んでも、いざ営業しようとすると許可が下りない——そんなケースは決して珍しくありません。物件取得の前に、必ず次の4点を確認しておきましょう。

  1. 用途地域:宿泊施設の営業が認められている地域か
  2. 消防法の設備要件:自動火災報知設備や誘導灯の後付けが可能か
  3. 建築基準法の用途変更:延床面積200㎡超の場合、確認申請が必要
  4. 給水設備:井戸水を使う場合、水質検査基準を満たせるか

特に古民家を活用する場合、外観からは判断できない部分で予想外のコストや時間が発生することが多々あります。物件購入前に、許可申請の見通しまで含めた事前調査を行うことが、結果的に開業までの最短ルートとなります。

竹田市での開業を成功させるために

竹田市は、観光資源・空き家・行政支援という宿泊事業に必要な要素が三拍子そろった、全国的にも珍しい地域です。一方で、宿泊施設の開業には旅館業法・建築基準法・消防法・条例など複数の法令が複雑に絡み合い、地域独自の支援制度も活用しながら進める必要があります。

当事務所では、竹田市をはじめ大分県内の宿泊事業開業支援を専門に行っており、物件選定の段階から旅館業許可・民泊届出・補助金活用まで、ワンストップでサポートしています。「いつか竹田で宿をやってみたい」という想いを、現実の事業計画へと進めるとき、専門家の伴走が必要になったら、いつでもお気軽にご相談ください。あなたの宿づくりが、竹田市の新しい風景の一部となる日を、楽しみにしています。