パワハラの慰謝料請求書面の書き方|自分で作れる文例・請求先・手順を徹底解説

はじめに|パワハラの慰謝料は書面で正式に請求できる

「上司からのパワハラで精神的に追い詰められた」「会社に相談しても動いてくれない」「慰謝料を請求したいが、どうすればいいかわからない」——パワハラの被害を受けながら、泣き寝入りしている方は残念ながら多くいます。

パワハラによって生じた精神的・身体的・経済的損害は、法的に慰謝料・損害賠償として請求できます。そしてその第一歩となるのが、正式な書面による請求です。内容証明郵便を使った慰謝料請求書面を送ることで、相手(加害者・会社)に本気度を伝え、問題解決を促すことができます。

この記事では、パワハラ慰謝料請求書面の書き方・文例・請求先の選び方・証拠の整理・送り方・送付後の対応まで、自分で進めるために必要な知識をすべて解説します。

まず確認|パワハラで慰謝料を請求するための基本知識

パワハラの法的な定義

2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)により、職場のパワハラは法的に明確に定義されました。以下の3つの要素をすべて満たすものがパワハラとして認定されます。

  • 優越的な関係を背景にした言動:職務上の地位・人間関係など職場内での優位性を背景にしている
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動:業務上の必要性がない、または必要性があっても方法が不相当
  • 労働者の就業環境が害される言動:身体的・精神的な苦痛を与え、または就業環境を悪化させる

パワハラの主な類型(厚生労働省の定義)

類型具体例
身体的な攻撃暴行・傷害
精神的な攻撃脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
人間関係からの切り離し隔離・仲間外し・無視
過大な要求業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制
過小な要求能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事の命令・仕事を与えない
個の侵害私的なことに過度に立ち入る

誰に対して請求できるか

パワハラの慰謝料は以下の者に請求できます。

  • 加害者個人(上司・同僚):不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求
  • 会社(使用者):使用者責任(民法715条)・職場環境配慮義務違反に基づく損害賠償請求。会社はパワハラを防止する義務を負っており、適切な対処を怠った場合も責任を問えます

慰謝料の相場

パワハラの慰謝料は、被害の内容・期間・精神的苦痛の程度・身体的被害の有無などによって大きく異なります。参考として、裁判例では以下の範囲が多く見られます。

被害の程度慰謝料の目安
比較的軽度(一時的な暴言・嫌がらせなど)10万〜50万円程度
中程度(継続的な精神的攻撃・業務妨害など)50万〜150万円程度
重度(うつ病発症・長期休職・身体的被害など)100万〜300万円以上

慰謝料に加えて、治療費・休業損害(働けなかった期間の収入)・弁護士費用も請求できる場合があります。

書面を送る前に|証拠の整理と準備

慰謝料請求書面を送る前に、以下の証拠・記録を整理しておきましょう。証拠が充実しているほど、交渉・訴訟で有利になります。

有効な証拠の例

  • 被害の記録日誌:いつ・誰から・どのような行為を受けたかを日時とともに記録したもの
  • 録音データ:上司からの暴言・威圧的な言動の録音(自分が参加している会話の録音は合法)
  • メール・チャット・SNSのスクリーンショット:パワハラの内容が記録されたデジタルデータ
  • 医師の診断書:うつ病・適応障害・睡眠障害などの診断書。パワハラとの因果関係を示す重要な証拠
  • 目撃者の証言:同僚など第三者が見ていた場合の証言
  • 会社への相談記録:人事・上司への相談の記録・会社の対応(または不対応)の記録
  • 残業記録・業務記録:過大な要求が行われた証拠として
💡 重要:証拠は退職前・会社を離れる前に必ず収集・保存してください。退職後はアクセスできなくなるデータが多くあります。

内容証明の書式ルール(基本)

項目ルール
文字数(横書き)1行あたり26文字以内
行数(横書き)1枚あたり26行以内
作成通数3通(相手用・自分用・郵便局保管用)
訂正方法修正液・修正テープ不可。二重線+訂正印
送付方法郵便局窓口のみ(配達証明も合わせて依頼を推奨)

【コピペOK】パワハラ慰謝料請求書面の文例3選

状況に合わせた文例を3パターン用意しました。【 】の部分を自分の情報に書き換えてください。すべて横書き1行26文字以内の書式ルールに準拠しています。

文例①【加害者個人宛】上司へのパワハラ慰謝料請求書

直属の上司からパワハラを受けた場合に、加害者個人に対して送る文例です。

損害賠償請求書

【加害者の住所】
【加害者の氏名】殿

 私は【会社名】【部署名】に勤務する【自分の氏名】と申します。本書は、貴殿から受けた職場におけるパワーハラスメント行為について、損害賠償を請求するものです。

 【被害の内容】
 貴殿は【期間:例「令和〇年〇月頃から令和〇年〇月頃にかけて」】の間、以下のパワーハラスメント行為を繰り返しました。
・【行為1:例「業務上の必要性のない人格否定・侮辱的な発言(「使えない」「お前はいらない」等)を日常的に行った」】
・【行為2:例「業務上達成不可能な過大なノルマを課し、未達の場合に公衆の面前で叱責した」】
・【行為3:例「正当な理由なく業務から排除し、長期にわたり仕事を与えなかった」】

 上記行為により私は精神的に著しい苦痛を受け、【年月日】に【医療機関名】において【病名:例「適応障害」「うつ病」】と診断されました。

 【請求内容】
 貴殿の行為は民法709条の不法行為に該当します。本書面到達後【14日】以内に、以下の損害について賠償していただくよう請求します。

・慰謝料     金【    】円
・治療費     金【    】円
・休業損害    金【    】円
     合計  金【    】円

 振込先
 金融機関:【金融機関名・支店名】
 口座種別:【普通・当座】
 口座番号:【口座番号】
 口座名義:【口座名義】

 期限内にご対応いただけない場合は、労働審判または民事訴訟を提起します。

 以上

【年 月 日】
【自分の住所】
【自分の氏名】 印

文例②【会社宛】使用者責任に基づく会社への慰謝料請求書

会社がパワハラを把握していたにもかかわらず適切な対処をしなかった場合に、会社に対して送る文例です。

損害賠償請求書

【会社の住所】
【会社名】
代表取締役 【代表者名】殿

 私は貴社【部署名】に勤務する(していた)【自分の氏名】です。本書は、貴社における職場のパワーハラスメントによって生じた損害の賠償を請求するものです。

 【被害の概要】
 私は【期間】にわたり、上司である【加害者の氏名・役職】から以下のパワーハラスメント行為を受け続けました。
・【具体的な行為1】
・【具体的な行為2】
・【具体的な行為3】
 【会社への申告と不作為】
 私は【年月日】に貴社【相談窓口・人事部等】に上記被害を申告しましたが、貴社は適切な調査・対処を行いませんでした。貴社にはパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)に基づく職場環境配慮義務があり、これを怠った責任があります。

 【請求内容】
 民法715条(使用者責任)に基づき、本書面到達後【14日】以内に下記金額をお支払いいただくよう請求します。

・慰謝料     金【    】円
・治療費     金【    】円
・休業損害    金【    】円
     合計  金【    】円

 振込先:【口座情報】

 期限内にご対応いただけない場合は、労働審判または民事訴訟を提起します。

 以上

【年 月 日】
【自分の住所】
【自分の氏名】 印

文例③【加害者・会社両方宛】個人と会社への連名請求書

加害者個人と会社の両方に対して同時に請求する場合の文例です。それぞれに別々の内容証明を送付します。

損害賠償請求書

【加害者の住所】
【加害者の氏名】殿

 私は【会社名】に勤務する【自分の氏名】です。本書は貴殿によるパワーハラスメントについて、正式に損害賠償を請求するものです。

 【行為の概要】
 貴殿は私の直属の上司として、【期間】にわたり以下の行為を行いました。
・【行為1】
・【行為2】

 上記行為により私は【病名】と診断され(【医療機関名】・【年月日】)、【 】日間の休業を余儀なくされました。

 【請求金額】
 民法709条に基づき、本書面到達後【14日】以内に下記金額をお支払いください。
  合計 金【       】円
  振込先:【口座情報】

 なお同日付けで【会社名】に対しても使用者責任(民法715条)に基づく同趣旨の請求書を送付しております。

 期限内にご対応いただけない場合は、労働審判を申し立てます。

 以上

【年 月 日】
【自分の住所】
【自分の氏名】 印

書面を書くときの重要ポイント

① パワハラ行為を具体的に記載する

「パワハラを受けた」という抽象的な記述ではなく、いつ・誰から・どのような言動を・どのくらいの頻度で受けたかを具体的に記載してください。具体的な記述があるほど、書面の説得力と証拠力が高まります。

② 医師の診断書との関連を示す

うつ病・適応障害などの診断がある場合は、診断書の内容(病名・発症時期)をパワハラ行為と結びつけて記載することで、因果関係を示せます。「パワハラ行為を受けた期間と発症時期が一致する」という事実が、請求の根拠を強化します。

③ 会社への申告と不対応を明記する

会社に相談・申告したにもかかわらず適切な対処がなされなかった場合は、その事実を書面に明記しましょう。パワハラ防止法により、会社はハラスメント防止・対処の義務を負っています。この義務違反を明記することで、会社への請求の根拠が強化されます。

④ 感情的・脅迫的な表現は避ける

パワハラの被害は非常に苦しいものですが、書面に感情的・脅迫的な表現を使うと、脅迫罪・名誉毀損として逆に訴えられるリスクがあります。事実と請求内容を冷静・客観的に記述することが重要です。

⑤ 請求金額には根拠を持たせる

慰謝料の金額は、被害の期間・程度・診断書の内容・休業日数・治療費の実額などに基づいて設定してください。根拠なく極端に高額な請求は、交渉・訴訟で認められにくくなります。

書面を送った後の対応

相手から返答があった場合

相手(加害者・会社)から示談の申し出・部分的な支払いの提案などが来た場合は、口頭での合意は避け、必ず書面(示談書・合意書)で内容を確認してください。示談書には支払い金額・支払い期日・「今後一切の請求を行わない」旨を明記します。

無視・拒否された場合

期限内に返答がない・支払いを拒否された場合は、以下の法的手続きへ進みます。

  • 労働審判の申し立て:パワハラによる損害賠償請求に最もよく使われる手続きです。裁判所に申し立てることで、労働審判委員会が調停・審判を行います。通常3回以内の期日で解決し、訴訟より迅速です。弁護士なしでも申し立て可能ですが、弁護士のサポートが推奨されます。
  • 民事訴訟:労働審判で解決しない場合、または最初から訴訟を選択する場合です。証拠の有無が勝敗を大きく左右します。
  • 労働基準監督署への申告:パワハラが労働基準法違反(時間外労働・安全衛生法違反等)を伴う場合は、労働基準監督署への申告も有効です。

【潜在ニーズに応える】書面を送る前に相談すべき機関

書面を自分で作成・送付する前に、以下の機関に相談することをおすすめします。特に証拠の評価・請求金額の設定・相手の対応予測については、専門家の意見が重要です。

相談窓口連絡先・特徴
法テラス0570-078374。弁護士費用立替制度あり
労働局の総合労働相談コーナー各都道府県の労働局。無料・予約不要。あっせん制度あり
労働基準監督署労働基準法違反が疑われる場合に申告できる
弁護士会の法律相談センター30分5,500円程度。労働問題に詳しい弁護士に相談可能
都道府県労働委員会不当労働行為・労働争議の調整を行う
社会保険労務士労務問題の相談。書面作成のサポートも可能

弁護士に依頼すべきケース

  • 請求金額が高額(100万円以上)で訴訟になる可能性が高い
  • 相手(会社・加害者)がすでに弁護士を立てている
  • 証拠が少なく、法的な評価が必要
  • 労働審判・訴訟に発展することが見込まれる
  • 会社から不当な圧力・報復を受けている

よくある質問(FAQ)

Q. 退職した後でもパワハラの慰謝料を請求できますか?

A. できます。退職後でも不法行為に基づく損害賠償請求権は消滅しません。ただし、消滅時効(被害を知った時から3年・または行為から20年)があるため、時間が経つほど証拠収集が難しくなります。退職後も早めに行動することをおすすめします。

Q. 録音は証拠として使えますか?

A. 自分が参加している会話(上司からの叱責・面談など)の録音は合法であり、証拠として有効です。相手の同意なく録音しても違法にはなりません。ただし、自分が参加していない会話の録音(盗聴)は違法になる可能性があります。

Q. 証拠が少ない場合でも請求できますか?

A. 証拠が少ない場合でも請求自体はできます。ただし、証拠が不十分だと相手が否定した際に立証が難しくなります。書面を送る前に弁護士に証拠の評価を受け、追加収集できる証拠がないかを確認することをおすすめします。

Q. 在職中にパワハラの慰謝料を請求しても、報復・不利益を受けませんか?

A. パワハラ防止法により、相談・申告を理由とした不利益取扱いは禁止されています。会社が報復措置を取った場合は、それ自体が違法行為となり、追加の損害賠償請求の対象になります。ただし、現実的には在職中の請求は精神的負担が大きいため、退職後に行動する方が多いのも事実です。弁護士に相談の上、タイミングを検討しましょう。

Q. 上司個人と会社の両方に請求した場合、二重取りできますか?

A. できません。両方に請求できますが、受け取れる総額は損害額の範囲内です。加害者個人と会社は「不真正連帯債務」の関係にあり、どちらかから全額の支払いを受ければ、もう一方への請求権は消滅します。両者に請求書面を送ることで支払いを促す圧力にはなりますが、二重取りにはなりません。

まとめ|証拠を整え、冷静に書面で権利を主張しよう

パワハラ慰謝料請求書面の書き方を振り返ります。

  • パワハラによる損害賠償は加害者個人(民法709条)・会社(民法715条)の両方に請求可能
  • 書面を送る前に録音・日誌・診断書・メール記録などの証拠を整理しておく
  • 書面にはパワハラ行為の具体的内容・診断書との関連・会社への申告と不対応・請求金額の根拠を明記する
  • 感情的・脅迫的な表現は避け、事実と請求内容を冷静・客観的に記述する
  • 書面は内容証明郵便+配達証明で送付する
  • 期限内に対応がない場合は労働審判の申し立てが最も効果的な次の手段
  • 高額請求・証拠が少ない・会社が弁護士を立てているケースは早めに弁護士に相談する

パワハラによる被害は、あなたが我慢すべきものではありません。法律はあなたの権利を守るために存在します。証拠を整え、冷静に書面で権利を主張することが、被害回復への確実な一歩です。一人で抱え込まず、法テラス(0570-078374)や労働局の相談窓口を積極的に活用してください。

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