オーダーメイド作品が打ち合わせと違う…返金・慰謝料・内容証明の対処法【個人作家トラブル】

「打ち合わせと全然違うものが届いた」「返金してほしいのに対応が不誠実で困っている」「内容証明を送りたいけど書き方がわからない」――そんなお悩みを抱えていませんか?

インスタグラムやTwitter(X)などのSNSを通じたオーダーメイド購入は年々増えています。しかし、個人作家との取引はトラブルが起きたときの対処が難しく、泣き寝入りしてしまう方も少なくありません。

この記事では、返金請求・慰謝料・内容証明について、法的な根拠からすぐ使えるテンプレートまでわかりやすく解説します。

SNSオーダーメイドトラブルの実態

増える個人作家との直接取引

インスタグラムやminne、ハンドメイドマーケットを通じて、個人作家に直接オーダーメイドを依頼するスタイルが広まっています。人気の作家さんに依頼できること、世界にひとつだけの作品が手に入ることは大きな魅力です。一方で、個人間取引特有のリスクも存在します。

特に多いのが以下のようなトラブルです。

  • 打ち合わせと異なるデザイン・仕様で納品された
  • 納期を大幅に過ぎても届かない
  • クレームを入れたら急に連絡が取れなくなった
  • 返金を求めても「制作済みなので対応不可」と断られた
  • 優先・先着料金を支払ったのに扱いが変わらなかった

個人間取引が難しいワケ

一般的なショッピングサイトと違い、SNS上での個人間取引は書面による契約書がないケースがほとんどです。DM(ダイレクトメッセージ)のやり取りだけで仕様を決め、振込で支払い、発送で完結するという流れが多く、トラブルが起きたときに「証拠がない」「どこに相談すればいいかわからない」という状況に陥りがちです。

しかし、書面契約がなくても法的に有効な契約は成立しています。口頭(DM・メッセージ含む)での合意でも契約は成立するのが日本の民法の原則です。つまり、泣き寝入りする必要はありません。

「打ち合わせと違う商品」は法律的にどう評価される?

オーダーメイドは「請負契約」にあたる

既製品の購入は「売買契約」ですが、オーダーメイドはお客さんの注文に応じてゼロから制作するため、法律上は「請負契約」に分類されることが多いです。

請負契約では、発注者(あなた)と受注者(作家さん)が合意した仕様どおりの作品を完成させることが、作家さんの義務です。DMで細かく打ち合わせた内容、参考画像として送ったイメージ、サイズや色の指定――これらはすべて契約内容の一部になります。

「契約不適合責任」とは

2020年4月に施行された改正民法では、「瑕疵担保責任」という概念が「契約不適合責任」に変わりました。これは、引き渡された商品・作品が「契約の内容に適合していない」場合に、売主・受注者が負う責任のことです。

打ち合わせと異なる商品が届いた場合、これは典型的な契約不適合にあたります。この場合、買主(あなた)には次の権利が認められています。

権利の種類 内容
修補請求 打ち合わせどおりに直してもらう
代金減額請求 不具合に応じて代金を減らす
契約解除 契約をなかったことにして全額返金を求める
損害賠償請求 被った損害(慰謝料含む)の賠償を求める

「優先料金3万円」の返金は請求できるか

今回のケースのように「月2回の抽選ではなく、別途3万円を支払うことで先着順でオーダーを受け付ける」という仕組みは、優先的なサービスを受ける対価として支払ったお金です。

この3万円は「オーダーメイド作品の代金」とは別の性質を持っており、「優先してオーダーを受け付けてもらえるサービス」の対価と考えられます。

では、4点目の商品が打ち合わせと違うものだった場合、この3万円は返ってくるでしょうか。

  • 契約を解除した場合:契約全体の解除であれば、優先料金を含む支払い全額の返金を求めることができる可能性があります
  • 一部解除・減額の場合:4点目の商品代の返金+優先料金の一部返金という形での交渉が考えられます
  • 損害賠償として:優先料金分が直接の損害として認められれば返金請求の根拠になります

ただし、すでに3点は問題なく完成しており手元にある状況のため、「5点全部の契約を解除する」という主張は難しい場合もあります。4点目のトラブルに絞って返金・損害賠償を求めることが現実的なアプローチです。

「慰謝料」「時間を無駄にした損害」は請求できるのか

「慰謝料」の正確な意味

「慰謝料」という言葉はよく使われますが、法律的には「精神的損害に対する損害賠償」のことを指します。つまり、慰謝料も損害賠償の一種です。

損害賠償には大きく2種類あります。

  • 財産的損害:お金に換算できる実際の損害(返金されていない代金など)
  • 精神的損害(慰謝料):心を傷つけられたこと、精神的苦痛を受けたことへの賠償

個人間取引で慰謝料が認められる条件

実は、単純な「契約不履行(約束を守らなかった)」だけでは、慰謝料が認められるハードルは高めです。裁判所の実務では、財産的損害で補えない特別な精神的苦痛がある場合に慰謝料を認める傾向があります。

慰謝料が認められやすいケースの例を挙げます。

  • 故意に(わざと)不良品を届けた悪質なケース
  • クレームに対して侮辱的・脅迫的な言動があった場合
  • 長期間にわたって精神的に追い詰めるような対応が続いた場合
  • 繰り返し約束を破り、誠実な対応を一切しなかった場合

今回のケースでは、「対応に納得がいかなかった」「傷ついた」というご事情があります。慰謝料の請求自体は可能ですが、金額は数万円程度に留まる可能性が高いというのが一般的な見立てです。ただし、相手方の対応内容によっては増額を主張できる場合もあります。

「打ち合わせに費やした時間・労力」は請求できるか

打ち合わせのためにかけた時間、やり取りのストレス、受け取り拒否や返金交渉に費やした労力――これらを「慰謝料」として請求するよりも、「損害賠償」として構成する方が法的には筋が通っています。

ただし、「時間を無駄にされた」という損害を金額に換算して認めてもらうには、具体的な根拠が必要です(例:専門職の場合は時給換算など)。内容証明では「精神的苦痛および時間的損害に対する賠償として〇〇円を求める」と明記することで、交渉の出発点にすることができます。

請求額の目安(本件モデルケース)

請求項目 根拠 目安金額
優先料金(先着費用) 損害賠償・契約解除に伴う返還 30,000円
4点目の商品代金 契約不適合責任による返金 商品代金全額
精神的損害(慰謝料) 不誠実な対応による精神的苦痛 数万円〜(交渉次第)
時間的・労力的損害 損害賠償(具体的根拠が必要) 交渉次第

内容証明郵便とは?なぜ送るのか

内容証明の基本的な仕組み

内容証明郵便とは、「いつ・誰が・誰に・どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれる郵便サービスです。法的な拘束力そのものはありませんが、以下の点で非常に重要な役割を果たします。

  • 証拠力:「そんな請求は受けていない」という言い逃れを封じられる
  • 心理的効果:正式な法的手続きの前段階であることを相手に伝えられる
  • 時効の中断:内容証明を送ることで、消滅時効の完成を一時的に阻止できる(催告)
  • 解除の意思表示:契約解除の意思を明確に伝える手段として有効

「相手が応じるかどうかに関係なく送りたい」という気持ちは、法的には非常に正しい判断です。内容証明は訴訟を起こす前の重要なステップであり、送ること自体に大きな意味があります。

内容証明を送るタイミング

一般的には以下のタイミングで送ることが多いです。

  • 口頭・DMでの交渉が不調に終わった後
  • 相手が無視・音信不通になった場合
  • 少額訴訟・通常訴訟を起こす前の最終通告として
  • 返金期限を明確に設定したいとき

内容証明を送るために必要なもの

内容証明は「相手の住所」がわからないと送ることができません。SNSのアカウントのみでつながっている場合は、まず住所を確認することが必要です。

  • 振込先の名義・口座情報から住所を問い合わせる
  • 過去のやり取りの中で住所を教えてもらっていた場合はそれを活用
  • 住所が不明な場合は弁護士に相談し、発信者情報開示請求なども検討する

内容証明の書き方とテンプレート

書式のルール

内容証明には郵便局が定める書式ルールがあります。主なルールは以下のとおりです。

  • 横書きの場合:1行20字以内・1枚26行以内
  • 縦書きの場合:1行20字以内・1枚26行以内
  • 同じ文書を3通作成(郵便局保管用・受取人用・差出人控え用)
  • e内容証明(オンライン)を使えば書式制限が緩和される

内容証明の基本構成

  1. 日付・宛名・差出人情報
  2. 件名(「通知書」「請求書」など)
  3. 事実の経緯を時系列で簡潔に記載
  4. 法的根拠の明示(契約不適合責任・債務不履行)
  5. 具体的な請求内容と金額
  6. 回答・履行の期限(〇日以内)
  7. 期限内に応じない場合の対応予告
  8. 結語・差出人署名

文例テンプレート(本件に即したモデル)

令和○年○月○日

○○県○○市○○町○丁目○番○号
○○○○ 様

通 知 書

 私(以下「通知人」といいます)は、令和○年○月頃より、貴殿のSNSアカウント(インスタグラム:@○○○○)を通じてオーダーメイド作品5点を発注いたしました。その際、優先受付費用として金30,000円を別途お支払いし、打ち合わせを重ねた上で注文を確定いたしました。

 しかしながら、4点目の商品について、事前の打ち合わせ内容(デザイン・仕様)と著しく異なるものが納品されました。この点について是正・対応を求めましたが、誠実な対応をいただけず、現在も解決に至っておりません。

 上記は民法上の契約不適合責任(民法562条以下)および債務不履行(民法415条)に該当するものと考えます。

 つきましては、以下のとおり請求いたします。

    記

一 優先受付費用として支払い済みの金30,000円の返金

一 4点目商品代金○○円の返金

一 精神的損害・時間的損害に対する賠償金○○円

一 合計金○○円を、本書面到達後14日以内にお振込みください

 期日内にご対応いただけない場合は、少額訴訟の提起その他法的手続きを検討いたしますことを申し添えます。

以上

○○県○○市○○町○丁目○番○号
氏名 ○○○○ ㊞

内容証明を書くときの注意点

内容証明でよくある失敗と注意点を確認しておきましょう。

  • 感情的な言葉は禁物:「最悪だった」「信じられない」などの感情表現は避け、事実のみを淡々と記載する
  • 金額は具体的に:「返金してほしい」だけでは不十分。金額を明記する
  • 期限を設定する:「14日以内」など具体的な期限を設けることで交渉力が高まる
  • 脅迫的な表現はNG:「拡散する」「晒す」などは法的に問題になる場合がある
  • 相手の住所を正確に:宛先が間違っていると届かない

内容証明を送った後の流れ

相手が応じた場合

内容証明を受け取った相手が「わかりました、返金します」と連絡してきた場合でも、口頭の約束だけで終わらせてはいけません。必ず示談書(合意書)を書面で作成しましょう。

示談書には次の内容を盛り込みます。

  • 返金額と振込期限
  • 「本件に関して今後一切の請求をしない」という清算条項
  • 双方の署名・日付

振込が完了してはじめて解決です。「振込する」という言葉だけで満足せず、入金確認まで完了させてください。

相手が無視・拒否した場合

内容証明を送っても相手が無視したり、拒否してきた場合は、次のステップに進みます。

手段 特徴 費用目安
少額訴訟 60万円以下・1回の期日で解決・本人申立可 数千円〜
通常訴訟 金額制限なし・時間と費用がかかる 弁護士費用含め数十万〜
消費生活センター 無料・中立的な立場で交渉支援 無料
弁護士への依頼 本格的な交渉・訴訟対応 初回相談5,000〜1万円〜

今後のトラブルを防ぐために

SNSオーダーメイド発注前の5つのチェックリスト

今後の取引でトラブルを防ぐために、以下を発注前に確認する習慣をつけましょう。

  • ✅ 仕様はDM・メッセージで明文化する
    「この画像のようなもの」「イメージ通りに」はNG。具体的なサイズ・色・デザインをテキストで合意する
  • ✅ キャンセル・返金ポリシーを確認する
    トラブル時の対応方針を事前に確認し、不明な点は質問しておく
  • ✅ 追加料金の性質を明確にする
    優先料金・手数料などの追加料金が何の対価か、返金されるケースはあるかを確認する
  • ✅ 支払いはトレーサビリティのある方法で
    現金手渡しは避け、銀行振込やクレジットカードなど記録が残る方法を使う
  • ✅ スクリーンショットを定期的に保存する
    DMのやり取りは定期的にスクショを保存。仕様変更は必ずDMで文字として残す

相談窓口まとめ

窓口 特徴 費用
消費生活センター(188番) 無料・匿名・初期相談に最適 無料
法テラス 弁護士費用の立替制度あり・収入制限あり 条件次第で無料〜
弁護士(初回相談) 具体的なアドバイス・交渉・訴訟対応 5,000〜1万円/回
行政書士 内容証明の作成代行・手頃な費用 3〜5万円程度
少額訴訟(裁判所) 自分で提起可能・60万円以下の請求 数千円〜

まとめ:あなたの要求は正当です。一人で悩まないでください

この記事をここまで読んでくださったあなたは、きっと今とても辛い思いをされているのではないでしょうか。お金のことだけでなく、信頼していた作家さんへの失望、何度も打ち合わせに費やした時間、そして誠実に対応してもらえなかったことへの悔しさ――そのすべてが「正当な不満」です。

今回のケースをまとめると、以下のことが言えます。

  • 打ち合わせと異なる商品の納品は「契約不適合責任」にあたるため、返金請求は法的根拠のある正当な要求です
  • 優先料金3万円の返金請求も、損害賠償・契約解除の文脈で主張できます
  • 慰謝料(精神的損害賠償)の請求は可能ですが、金額は交渉次第であることを把握しておくと交渉しやすくなります
  • 内容証明を送ることは正しい判断です。相手の返答に関わらず、記録と意思表示として重要な意味を持ちます

一方で、内容証明は「書き方ひとつで効果が変わる」文書でもあります。感情的な表現を入れてしまったり、請求金額が曖昧だったりすると、後の交渉や訴訟で不利になる可能性もあります。

「正しく・効果的に」内容証明を送るためには、専門家のサポートがあると安心です。

📩 内容証明の作成・トラブル対応のご相談はこちら

「自分のケースで本当に請求できるのか不安」「内容証明を代わりに作ってほしい」「相手への対応方法を一緒に考えてほしい」――そんなお悩み、まずはLINEでお気軽にご相談ください。

  • ✅ 内容証明の文面作成サポート
  • ✅ 請求額・法的根拠の整理
  • ✅ 相手との交渉方針のアドバイス
  • ✅ その後の手続き(少額訴訟など)のご案内

※ まずは無料でご相談内容をお聞きします。お気軽にどうぞ。

💬 LINEで無料相談する

※ 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。具体的な対応については専門家にご相談ください。