売掛金回収・未払い催告の内容証明文例集|自分で作れるテンプレートと送り方を解説
はじめに|売掛金が回収できない…内容証明が最初の有効な一手
「納品・サービス提供から何か月も経つのに入金がない」「支払いを催促してもはぐらかされ続けている」「取引先に連絡してもつながらなくなってしまった」——売掛金が回収できない状況は、事業者にとって経営に直結する深刻な問題です。
口頭や通常のメール・電話での催促に効果がない場合、次の有効な手段が内容証明郵便による正式な催告です。内容証明を送ることで相手に「本気で法的措置を検討している」という意思を伝えられ、支払いが動き出すケースが多くあります。また、その後の法的手続き(支払督促・訴訟)に向けた重要な証拠にもなります。
この記事では、売掛金回収・未払い催告のための内容証明の文例・書き方のポイント・時効との関係・送り方・送付後の対応まで、事業者目線で実用的な内容を徹底解説します。
売掛金回収に内容証明を使う3つのメリット
① 相手に法的措置の意思を示せる
内容証明郵便は「郵便局が内容・差出日・受取人を証明する」公的な文書です。通常のメールや電話とは異なり、受け取った相手は「本格的な法的手続きが始まる」と認識しやすく、無視し続けることへの心理的ハードルが上がります。特に相手が「払えない」ではなく「払いたくない」というケースで効果を発揮します。
② 消滅時効の完成を猶予できる
売掛金の消滅時効は、権利を行使できると知った時から原則5年(民法166条)です。時効が近づいている場合、内容証明による催告で時効の完成を6か月間猶予できます(民法150条)。ただし、猶予期間内に訴訟・支払督促・調停などの手続きを行わなければ、時効は完成してしまいます。
③ その後の法的手続きの証拠になる
支払督促・訴訟・調停に発展した際、「事前に正式な支払い催告を行った」という証拠として内容証明が機能します。相手が「催告を受けていない」と主張することを防げます。
内容証明を送る前に確認すること
① 売掛金の内容・金額・支払期日を整理する
内容証明に記載する情報を正確に整理しておきましょう。請求書・発注書・納品書・契約書などを手元に用意して、以下の情報を確認してください。
- 取引の内容(商品名・サービス名・納品日)
- 請求金額(税込・税別の区別)
- 約定の支払期日
- これまでの催促の経緯(メール・電話の記録)
- 相手の正確な住所・会社名・代表者名
② 時効を確認する
売掛金(商業上の債権)の消滅時効は、2020年4月の民法改正により「権利を行使できると知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」の早い方に統一されました。支払期日から5年が経過している場合は、内容証明送付前に弁護士に相談することをおすすめします。
③ 相手の支払能力を確認する
相手企業が倒産・廃業している場合、内容証明を送っても回収は困難です。相手の経営状況を事前に確認し、回収可能性を見極めた上で手続きを進めましょう。
書式ルールの基本(内容証明の共通ルール)
| 項目 | ルール |
|---|---|
| 文字数(横書き) | 1行あたり26文字以内 |
| 行数(横書き) | 1枚あたり26行以内 |
| 作成通数 | 3通(相手用・自分用・郵便局保管用) |
| 訂正方法 | 修正液・修正テープ不可。二重線+訂正印 |
| 送付方法 | 郵便局窓口のみ(ポスト投函不可) |
| 配達証明 | 合わせて依頼することを強く推奨 |
【コピペOK】売掛金回収・未払い催告の内容証明文例5選
状況に合わせた文例を5パターン用意しました。【 】の部分を自分の情報に書き換えてください。すべて横書き1行26文字以内の書式ルールに準拠しています。
文例①【基本】売掛金支払いの催告書(初回送付版)
口頭・メールでの催促に効果がなく、初めて内容証明を送る場合の標準的な文例です。
売掛金支払催告書
【相手の住所】
【会社名・相手の氏名】殿
私(当社)は、貴殿(貴社)に対し、下記のとおり売掛金の支払いを催告します。
記
一、取引の内容
【商品名・サービス名・取引内容】
納品日(役務提供日):【年月日】
一、請求金額
金【 】円(税込)
一、約定支払期日
【年月日】
上記金額につきましては、約定支払期日である【年月日】を経過した現在も入金が確認できておりません。
本書面到達後【14日】以内に下記口座へお振り込みいただきますよう催告します。
振込先
金融機関:【金融機関名・支店名】
口座種別:【普通・当座】
口座番号:【口座番号】
口座名義:【口座名義】
期限内にお支払いいただけない場合は、法的手続きを取ることをここに通知します。
以上
【年 月 日】
【自分の住所・会社所在地】
【自分の氏名・会社名・代表者名】印
文例②【複数月・複数取引】複数の未払い売掛金をまとめて催告する場合
複数月にわたる未払いや複数の取引をまとめて催告する場合の文例です。
売掛金支払催告書
【相手の住所】
【会社名・相手の氏名】殿
私(当社)は、貴殿(貴社)に対し、下記複数の売掛金について支払いを催告します。
記
一、未払い売掛金の内訳
【年月】分 【内容】 金【 】円
【年月】分 【内容】 金【 】円
【年月】分 【内容】 金【 】円
合計 金【 】円
一、最終約定支払期日
【年月日】
上記合計金額につきまして、約定期日を経過した現在も入金が確認できておりません。
本書面到達後【14日】以内に合計金額を下記口座へお振り込みいただきますよう催告します。
振込先:【口座情報】
期限内にお支払いいただけない場合は、支払督促または訴訟を提起します。
以上
【年 月 日】
【自分の住所・会社所在地】
【自分の氏名・会社名・代表者名】印
文例③【強い警告版】再三の催促にも応じない相手への警告書
すでに複数回催促を行ったにもかかわらず、支払いも連絡もない相手への強い警告書です。
支払催告・警告書
【相手の住所】
【会社名・相手の氏名】殿
私(当社)は、貴殿(貴社)に対して下記売掛金の請求を行っておりますが、約定支払期日から【 】か月が経過した現在も支払いがなされておりません。
記
取引内容:【内容】
請求金額:金【 】円
約定支払期日:【年月日】
当社はすでに【年月日】【年月日】【年月日】に支払いの催促を行いましたが、いずれも誠実な回答・対応がなされておりません。
本書面到達後【7日】以内に上記全額を下記口座へお振り込みください。
振込先:【口座情報】
期限内にお支払いいただけない場合は、支払督促の申し立てまたは民事訴訟を即時提起します。また、遅延損害金(年【 】%)も合わせて請求します。
以上
【年 月 日】
【自分の住所・会社所在地】
【自分の氏名・会社名・代表者名】印
文例④【分割払いの合意が守られない場合】分割払い合意不履行への催告書
一度分割払いの合意をしたにもかかわらず、支払いが滞っている場合の文例です。
支払催告書
【相手の住所】
【会社名・相手の氏名】殿
私(当社)と貴殿(貴社)は、【年 月日】に売掛金【 】円の支払 いについて、下記のとおり分割払いの 合意をいたしました。
合意内容
毎月【 】日までに金【 】 円を支払う(全【 】回払い)
しかし、【年月日】の【第 回】分 以降の支払いが滞っており、現在の未 払い残額は金【 】円となって おります。
本書面到達後【14日】以内に未払い 残額全額を一括にて下記口座へお振り 込みください。
振込先:【口座情報】
期限内にお支払いいただけない場合 は、合意不履行として訴訟を提起しま す。
以上
【年 月 日】
【自分の住所・会社所在地】
【自分の氏名・会社名・代表者名】印
文例⑤【時効完成直前】時効中断(猶予)のための催告書
時効完成が近い場合に、時効の完成を6か月猶予するために送る緊急の催告書です。
売掛金支払催告書(時効中断)
【相手の住所】
【会社名・相手の氏名】殿
私(当社)は、貴殿(貴社)に対し 、下記のとおり売掛金を有しておりま す。
記
取引内容:【内容】
発生年月日:【年月日】
請求金額:金【 】円
本書面は、民法150条に基づき時効 の完成猶予のための催告として送付す るものです。
本書面到達後【14日】以内に上記金 額を下記口座へお振り込みください。
振込先:【口座情報】
なお、本催告後6か月以内に訴訟・ 支払督促等の法的手続きを行う予定で す。
以上
【年 月 日】
【自分の住所・会社所在地】
【自分の氏名・会社名・代表者名】印
売掛金回収の内容証明を書くときの重要ポイント
① 取引の特定情報を具体的に記載する
「売掛金がある」という曖昧な記載では説得力がありません。取引の内容・納品日・請求書番号・約定支払期日・請求金額を具体的に記載することで、文書の証拠能力が高まります。請求書や発注書の番号を記載しておくと、後の法的手続きでも活用しやすくなります。
② 税込・税別を明確にする
請求金額は税込・税別のどちらで記載するかを明確にしましょう。通常は「金〇〇円(消費税込)」と記載します。税抜き金額と消費税額を分けて記載してもかまいません。
③ 遅延損害金を明示することの効果
「遅延損害金も合わせて請求する」と明記しておくことで、相手への心理的プレッシャーが増します。ただし、実際に遅延損害金を計算して請求する場合は、適用される利率(契約書の定め・商事法定利率など)を確認してから記載しましょう。
④ 次の法的手続きを具体的に記載する
「法的手続きを取る」という抽象的な表現より、「支払督促を申し立てる」「民事訴訟を提起する」と具体的な手続き名を記載する方が、相手への抑止効果が高まります。実際に実行する気のない手続きを書くと「ハッタリだ」と判断されるリスクがあるため、実行できる手続きを記載しましょう。
⑤ 感情的な表現は避ける
売掛金が回収できない状況は非常に腹立たしいものですが、「詐欺だ」「許せない」などの感情的・断定的な表現は避けましょう。こうした表現は名誉毀損・脅迫として逆に相手から訴えられるリスクがあります。
郵便局での送付手順と費用
- 同じ内容の文書を3通用意する
- 最寄りの郵便局の窓口へ持参する(ポスト投函不可)
- 「内容証明郵便で送りたい」と伝え書式チェックを受ける
- 「配達証明」を必ず合わせて依頼する
- 料金を支払い、控えと追跡番号を受け取る
| 料金の種類 | 目安金額 |
|---|---|
| 基本郵便料金+書留料金 | 約555円〜 |
| 内容証明料金(1枚目) | 440円 |
| 内容証明料金(2枚目以降) | 1枚ごとに260円追加 |
| 配達証明(強く推奨) | 320円 |
| 合計目安(1枚・配達証明あり) | 約1,300円〜 |
【潜在ニーズに応える】内容証明を送った後の回収手順
内容証明を送っても支払いがない場合、段階的に法的手続きを進めることで回収できる可能性が高まります。
段階別・売掛金回収の法的手順
| 段階 | 手続き | 特徴・費用目安 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 内容証明による催告 | 費用約1,300円〜。心理的プレッシャーを与える |
| 第2段階 | 支払督促の申し立て | 裁判所に申し立て。費用が安く(数千円〜)弁護士不要で手続き可能。相手が異議申し立てをすると訴訟に移行する |
| 第2段階(別) | 少額訴訟 | 60万円以下の請求に使える。1回の期日で完結。費用数千円〜 |
| 第3段階 | 通常の民事訴訟 | 60万円超の場合。弁護士費用が別途かかる場合が多い |
| 第4段階 | 強制執行(差し押さえ) | 判決・支払督促に基づき、預金口座・売掛債権・動産などを差し押さえる |
支払督促とは(特におすすめの手続き)
支払督促は、裁判所に申し立てることで、裁判官が相手に支払いを命じる「督促状」を発行してもらえる手続きです。弁護士なしで申し立てでき・費用が訴訟より大幅に安く・書類のみで審査されるという特徴があります。相手が2週間以内に異議申し立てをしなければ、強制執行が可能になります。売掛金回収においては、内容証明の次の手順として非常に有効です。
弁護士・専門機関への相談窓口
- 法テラス(日本司法支援センター):0570-078374。費用立替制度があります。
- 中小企業のための法律相談窓口:商工会議所・中小企業基盤整備機構が相談を受け付けています。
- 各都道府県の弁護士会:企業間取引・売掛金回収に詳しい弁護士を紹介してもらえます。
- 債権回収(サービサー)会社:弁護士法の規制を受けながら債権回収を行う専門会社。高額・回収困難な案件で活用できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 内容証明を送れば必ず売掛金を回収できますか?
A. 内容証明を送るだけで強制的に回収できるわけではありません。ただし、相手が支払い意思を持っているが後回しにしているケースでは、内容証明の送付を機に支払いが動き出すことが多くあります。支払いがない場合は支払督促・訴訟へ段階的に進むことで、最終的に強制執行による回収が可能になります。
Q. 相手が個人の場合と法人の場合で書き方は変わりますか?
A. 基本的な書き方は同じです。相手が法人の場合は「会社名・代表者名」宛に送ります。差出人も法人の場合は「会社所在地・会社名・代表者名」を記載します。宛先が個人であれば氏名・住所を、法人であれば登記上の本店所在地・会社名・代表者名を記載してください。
Q. 口頭や電話だけで取引した場合(書面なし)でも請求できますか?
A. 口頭での取引でも債権は発生します。ただし、書面がない場合は取引の存在・金額・支払期日を証明する証拠が必要になります。メールのやり取り・銀行の振込記録・相手とのSNSのやり取りなどが証拠になります。書面がない場合は、内容証明送付前に弁護士に相談することをおすすめします。
Q. 相手が「商品・サービスに問題があった」と主張して支払いを拒否しています。
A. 相手が品質問題・瑕疵(かし)を理由に支払いを拒否する場合は、単純な未払いではなく争いのある案件になります。この場合は内容証明の送付前に証拠(納品確認書・検収書・通信記録など)を整理し、弁護士に相談することをおすすめします。
Q. 取引先が倒産しそうです。内容証明を送るべきですか?
A. 相手が倒産手続きに入っている・入りそうな場合は、内容証明より先に弁護士に相談して債権届出の準備を進めることをおすすめします。倒産手続きが開始された後は、通常の債権回収手続きではなく破産手続きの中で債権届出を行うことになります。時間が非常に重要なため、早急に動きましょう。
まとめ|内容証明で「本気度」を伝え、売掛金回収の一歩を踏み出そう
売掛金回収・未払い催告の内容証明活用法を振り返ります。
- 内容証明は「本気で法的手続きを検討している」という意思を相手に伝える最初の有効な一手
- 時効が近い場合は内容証明による催告で6か月間時効の完成を猶予できる(民法150条)
- 文例に取引内容・金額・支払期日・振込先・期限を具体的に記載することで説得力が増す
- 送付時は「配達証明」を必ず合わせて依頼する
- 内容証明を送っても支払いがない場合は支払督促→少額訴訟→通常訴訟→強制執行の順で法的手続きを進める
- 相手が倒産しそう・争いがある・高額案件の場合は早めに弁護士へ相談する
売掛金の未回収は、放置するほど回収が難しくなります。この記事の文例を使って、今日中に内容証明の作成を始めましょう。内容証明を送ることが、売掛金回収への確実な第一歩になります。一人で抱え込まず、回収が難しい場合は弁護士・法テラス・商工会議所などへの相談も積極的に活用してください。

