スナック・居酒屋のツケが払われない…回収できる?内容証明・少額訴訟の使い方を徹底解説
「ツケで飲んだお客さんが、約束を守らずに他のお店で飲み歩いている…」
そんな状況に、怒りと困惑が入り混じっていませんか?
お店を信頼してツケを認めてあげたのに、何度連絡しても「大丈夫です」の一点張り。
初めてのことで、どこから手をつければいいかわからない方も多いと思います。
この記事では、飲食店のツケ未払いを合法的・確実に回収するための手順を、内容証明郵便・少額訴訟・支払督促・弁護士依頼まで、初心者にもわかるように丁寧に解説します。
この記事を読むとわかること:
- ツケ未払いは法的に取り返せる「債権」であること
- 時効が来る前にやるべき具体的なステップ
- 内容証明郵便の役割と使いどころ
- 少額訴訟・支払督促の手順と費用
- 今後のトラブルを防ぐ予防策
まず知っておきたい「ツケ」の法的な位置づけ
ツケは立派な「債権」です
「ツケ」という言葉には、なんとなく曖昧で「回収できなければ仕方ない」というイメージを持つ方も多いですが、法律上は明確な債権(お金を請求する権利)として認められています。
ツケとは、飲食代金をその場で支払わず「後日まとめて払う」と約束した後払い契約のことです。この約束は口頭だけでも成立し、書面がなくても請求できます。たとえ領収書や請求書が手元になくても、来店記録やLINEのやり取りが残っていれば十分証拠になり得ます。
スナック・居酒屋・ラウンジ・キャバクラ・ホストクラブなど、お酒を提供する飲食店では昔から「常連さんだから」という信頼でツケを認めるケースが多いですが、その分トラブルにも発展しやすい側面があります。
絶対に知っておきたい「時効」の話
ツケの回収で最も気をつけなければならないのが消滅時効です。
2020年4月に改正民法が施行され、飲食代金の時効は従来の「1年」から「5年」に延長されました。「債権者が権利行使できることを知ったとき(=支払期日)から5年」が時効の起算点となります。
| 項目 | 改正前(〜2020年3月) | 改正後(2020年4月〜) |
|---|---|---|
| 飲食代金の時効 | 1年 | 5年 |
| 起算点 | 飲食した日 | 支払期日(知った時) |
| 内容証明による時効延長 | 6ヶ月 | 6ヶ月(催告後) |
⚠️ 注意:「催告(内容証明などでの請求)」だけでは時効は確定的に止まりません。催告後6ヶ月以内に裁判所の手続き(少額訴訟・支払督促など)を起こして初めて時効が確実に中断されます。「内容証明を送ったから安心」とならないよう注意が必要です。
【STEP1】まず証拠と情報を整理する
回収手続きを始める前に、手元にある証拠と情報を整理しましょう。後の手続きがスムーズになります。
集めておくべき証拠・情報リスト
- ✅ 来店日・飲食内容の記録(伝票、注文記録、POSデータなど)
- ✅ 支払いの約束をした記録(LINEのやり取り、通話録音など)
- ✅ 「大丈夫です」「払います」などの発言記録(これは「債務の承認」として時効をリセットさせる重要な証拠になります)
- ✅ 相手の氏名・住所・電話番号・勤務先
- ✅ 他のお店で飲んでいるという情報(SNS投稿など)
特に注目していただきたいのが「大丈夫です」という発言です。これは法律上「債務の承認」にあたり、時効がその時点でリセット(更新)されます。つまり、その発言があった時点から新たに5年の時効が進行し始めるということです。この発言のLINE履歴は必ず保存しておきましょう。
相手の住所がわからない場合
内容証明を送るには相手の住所が必要です。連絡先や来店時の情報(会員登録・予約記録など)から確認してみましょう。それでもわからない場合は、弁護士・司法書士に依頼することで住民票の職務上請求が可能になります。
【STEP2】自力での任意回収を試みる
いきなり法的手段に訴える前に、任意での回収を試みることが一般的です。ただし、この段階から「記録を残す」ことを徹底してください。
連絡の際に必ず守るべきこと
- 支払い期限を明確に伝える(「◯月◯日までにお支払いください」)
- 口頭ではなくLINE・メール等の文面で行う(証拠になる)
- 「期限までに支払いがない場合、法的手段を取ります」と明記する
- 脅迫・嫌がらせにならないよう冷静な文面を心がける
💡 ポイント:「他のお店で飲んでいる」という事実をSNSで確認できる場合は、スクリーンショットを保存しておきましょう。悪意の有無を示す証拠として使える場合があります。
それでも払わない場合は?
連絡しても「大丈夫」「後で払う」と繰り返すだけで一向に支払われない——。そうなったら、いよいよ法的な手段に進む段階です。次のステップに進みましょう。
【STEP3】内容証明郵便を送る
内容証明郵便とは何か
内容証明郵便とは、「いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が公的に証明してくれる郵便手段です。法的な効果としては以下が挙げられます。
- 心理的プレッシャーを与え、任意払いを促す
- 「催告(請求した事実)」を公的に残せる
- 時効の完成を6ヶ月間猶予できる(その間に裁判手続きを起こすことで確実に時効を止められる)
- 後の裁判手続きで「きちんと請求した」という証拠になる
内容証明に書く内容
書き方に特別な資格は不要です。以下の内容を盛り込めば十分です。
| 記載項目 | 内容例 |
|---|---|
| 差出人・受取人 | 店名・住所、相手の氏名・住所 |
| 請求内容 | 「2025年2月28日〜3月5日の間に当店にてご飲食いただいた代金合計78,300円」 |
| 支払い期限 | 「本書面到達後14日以内」など具体的な期日 |
| 振込先 | 銀行名・支店名・口座番号 |
| 未払い時の警告 | 「期日までにお支払いがない場合は、法的手続きに移行いたします」 |
内容証明郵便の出し方・費用
- 出し方:郵便局の窓口(e内容証明はオンラインでも可能)
- 費用目安:基本料金+一般書留+内容証明料で約1,500〜2,500円程度
- 書式:縦書き・横書き問わず。1行20字以内・1枚26行以内が基本
- 同じ文書を3通用意(郵便局保管・差出人保管・相手方送付)
行政書士・司法書士に作成を依頼する場合は2〜3万円程度が相場です。専門家に依頼すると文書の法的効果が高まるほか、相手への心理的プレッシャーも増します。
【STEP4】少額訴訟を起こす
少額訴訟とは
内容証明を送っても支払いがない場合、次の選択肢が少額訴訟です。少額訴訟とは、60万円以下の金銭トラブルに使える、弁護士なしでも申し立てられる簡易な裁判手続きです。今回の78,300円というケースは、この少額訴訟に最適な金額帯です。
通常の裁判と違い、原則として1回の審理で判決が出るのが最大の特徴です。
少額訴訟の手順(ステップ解説)
STEP 1: 相手の住所地を管轄する簡易裁判所に訴状を提出する
STEP 2: 必要書類(証拠・来店記録・LINEのスクリーンショットなど)を準備する
STEP 3: 裁判所から呼出状が相手に届く(通常2〜4週間後に審理期日が設定される)
STEP 4: 審理当日に裁判官の前で双方が主張する
STEP 5: 判決または和解が成立する
費用・期間の目安
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立費用(印紙代) | 78,300円の場合:約1,000円以下 |
| 郵便切手代 | 数百円〜1,000円程度 |
| 審理期間の目安 | 申立から1〜3ヶ月程度 |
| 弁護士不要 | 本人申立が可能 |
判決が出ても払わない場合(強制執行)
少額訴訟で判決が出ても相手が払わない場合は、強制執行に進むことができます。相手の銀行口座や給与を差し押さえる手続きで、これも裁判所を通じて行います。相手の勤務先や金融機関が判明している場合はより有効です。
【STEP4・別案】支払督促という選択肢
少額訴訟と似た制度として支払督促もあります。裁判所が相手に「支払え」と命じる書面を送付する手続きで、書面のみで審理が行われるため、出廷不要・費用も少額訴訟より安いというメリットがあります。
| 比較項目 | 少額訴訟 | 支払督促 |
|---|---|---|
| 費用 | 印紙代(少額訴訟より高め) | 少額訴訟の半額程度 |
| 審理方法 | 口頭(出廷が必要) | 書面のみ(出廷不要) |
| 相手が異議を出した場合 | 通常訴訟に移行 | 通常訴訟に移行 |
| こんな場合に向いている | 相手が争う可能性がある場合 | 相手が反論しない可能性が高い場合 |
今回のケースのように「大丈夫」と言い続けているだけで争う様子がない相手には、支払督促が費用・手間の両面でコストパフォーマンスが高い選択肢といえます。
【STEP5】専門家(司法書士・弁護士)に依頼する
「自分でやるのは不安」「時間がない」「住所がわからない」という場合は、専門家に相談・依頼することが最も確実で早い解決策です。
専門家に依頼すべきケース
- 相手の住所・連絡先が不明の場合(住民票の職務上請求が可能)
- 相手が完全に連絡を無視している場合
- 未払いが複数名・高額に積み重なっている場合
- 時効が迫っている場合
- 手続きに使える時間がない場合
費用の目安
| 依頼先 | 対応できる案件 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 行政書士 | 内容証明作成 | 2〜3万円程度 |
| 司法書士 | 140万円以下の訴訟代理 | 5〜15万円程度 |
| 弁護士 | すべての案件・金額に対応 | 着手金5〜20万円程度+成功報酬 |
78,300円という金額の場合、弁護士費用との費用対効果を考えると、内容証明を行政書士に依頼→支払いがなければ本人で少額訴訟、または司法書士に一括依頼する流れが現実的です。
💡 法テラス(日本司法支援センター)を利用すると、収入要件を満たせば無料法律相談が受けられます。初めての方にもおすすめです。
今後のツケトラブルを防ぐために
今回の経験を活かして、今後同じトラブルが繰り返されないよう対策を整えておきましょう。
ツケを認める前のルール作り
- ツケの上限金額を決める(例:1名あたり3万円まで)
- 支払い期限を明確にする(例:翌月末まで)
- 「ツケ台帳」または専用ノートに記録する
- LINEでツケ残高を定期的に確認・送信する
いざというときのための準備
- 来店時に身分証のコピーをお預かりする(同意を得た上で)
- 「ツケ同意書・借用書」を一筆書いてもらう
- 勤務先や緊急連絡先を把握しておく
⚠️ 「常連さんだから大丈夫」という思い込みが、今回のようなトラブルの原因になります。信頼関係があるからこそ、書面でルールを明確にすることが双方にとって誠実な対応です。
よくある質問(Q&A)
Q. 口頭のツケでも法的に請求できますか?
A. できます。口頭の約束でも契約として成立します。来店記録・LINEのやり取りなど、飲食事実と未払いの事実を示す証拠があれば請求可能です。
Q. 相手が「そんなツケは知らない」と言い張ったら?
A. 記録が勝負です。伝票・注文記録・LINEの会話・振込の一部支払い履歴などがあれば反論できます。「大丈夫です」と返信したLINEは特に有力な証拠になります。
Q. 「大丈夫」という発言は証拠になりますか?
A. なります。これは「債務の承認」にあたり、時効が更新される重要な法的事実です。LINEのスクリーンショットは必ず保存してください。
Q. 他のお店で飲んでいるという情報・SNS投稿は使えますか?
A. 証拠として活用できる可能性があります。「支払い能力がある」「悪意がある」ことを示す状況証拠として提出できます。スクリーンショットを保存しておきましょう。
Q. 警察に相談できますか?
A. ケースによっては可能ですが、基本的には民事(お金の問題)として自分で動く必要があります。ただし、最初から「払うつもりがなかった」と立証できる場合は詐欺罪(刑事)に該当する可能性もゼロではありません。まずは弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。
Q. 時効はいつから数えればいいですか?
A. 支払期日(またはその日から請求できることを知った日)から5年です。「大丈夫」などの承認があった日から時効がリセットされる点も覚えておきましょう。
回収ステップのまとめ
ここまでの流れを整理します。
| ステップ | 内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| ① 証拠整理 | 来店記録・LINEの保存・相手情報の確認 | 無料 |
| ② 任意交渉 | LINE・電話で支払い期日を提示・記録 | 無料 |
| ③ 内容証明郵便 | 公的な催告・時効猶予・心理的プレッシャー | 約1,500〜2,500円(自分で作成の場合) |
| ④ 少額訴訟 or 支払督促 | 裁判所を通じた公的な回収手続き | 数百〜数千円(印紙代) |
| ⑤ 強制執行 | 口座・給与の差押え | 別途申立費用 |
| 専門家への依頼 | 行政書士・司法書士・弁護士 | 2〜20万円程度 |
まとめ:「諦める」必要はありません。記録と手順が武器になります。
ツケの未払いは、決して「お店側が泣き寝入りするしかない」問題ではありません。法律上、きちんと回収できる権利があります。
大切なのは「記録」と「手順」の二つです。LINEの一言「大丈夫です」も、来店記録の伝票も、すべてが回収のための武器になります。感情的にならず、一つひとつのステップを踏んでいけば、初めての方でも確実に回収への道を進めることができます。
ただ、「初めての経験で何をどうすればいいかわからない」「時間をかけずに確実に動きたい」という方には、専門家への相談が最も確実で早い方法です。
特に内容証明郵便は、適切な文面・法的効果を意識した作成が回収成功のカギを握ります。ぜひ一度、専門家にご相談ください。
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