カスハラ義務化2026|方針の次にやるべき実務5つと体制の作り方

⚠ 方針を作っただけでは、義務を果たしたことになりません。指摘を受ける前に、今すぐ無料でSOSをお送りください。

この記事では、カスハラ対策の社内体制をどう作るかを解説します。個別の客に対して実際に法的措置を取る手順は、別記事で扱っています。

この記事でわかること

「方針は作りました。研修もやりました。でも、現場は何も変わっていません」。義務化への対応を進めた企業から、最も多く聞かれる言葉です。

方針の策定、相談窓口の設置、研修の実施。ここまでは各社が着手しています。問題は、その先です。窓口はあるが誰も使わない。方針はあるが、現場は何をもって「これはカスハラだ」と判断すればよいのか分からない。この状態は、形式的には対応済みですが、実質的には何も変わっていません。

この記事では、方針を作った後に何を整えるべきかを整理します。

2026年10月に何が義務になるのか

施行日と根拠

改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント防止のための措置を講じることが、2026年10月1日から事業主の義務となりました。2026年2月26日には指針が公布され、講ずべき措置の具体的な内容が示されています。

指針が示す定義(三要件)

  1. 顧客等の言動であること
  2. 業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えていること
  3. 労働者の就業環境が害されること

あわせて、正当な苦情や要望など、社会通念上許容される範囲の申入れは該当しないことも明示されています。この点は、現場に伝える際に必ずセットで説明してください。「すべてのクレームがカスハラである」という誤解が広がると、本来の顧客対応まで硬直します。

対象となる「顧客等」の範囲

購入者や利用者に限られません。取引先の担当者、施設の利用者やその家族、施設の周辺に居住する方など、事業に関係する幅広い者が含まれるとされています。今後取引する可能性のある相手も対象です。

つまり、BtoBの企業や、一般消費者と直接接点のない事業者であっても、対象外ではありません。

対象となる事業主

義務の対象は事業主であり、規模による区別は設けられていません。労働者が一人でもいれば、対策が求められます。

対象となる言動の範囲

対面でのやりとりに限られず、電話やSNSを通じた言動も対象とされています。店舗を持たない事業者、リモートで業務を行う事業者も、当然に対象になります。

方針・窓口・研修だけでは足りない理由

多くの企業が止まっている地点

現時点で各社が完了しているのは、おおむね次の三つです。

  • カスハラを許さないという方針を定め、周知した
  • 相談窓口を設置し、担当者を決めた
  • 従業員向けの研修を実施した

いずれも必要な措置です。しかし、これらはすべて「事前の準備」にあたります。実際に事案が発生したときに何が起きるかは、別の問題です。

指針は事後の対応まで求めている

指針は、相談に対して適切に対応することや、事案が発生した後の対応についても求めています。つまり、体制を作っただけでは足りず、それが機能した記録が必要になります。

現場から見た「対策済み」の実態

形式上の状態 現場での実態
方針を周知した 「許さない」と言われても、何をしていいか分からない
相談窓口を設置した 相談すると業務が増えるので使われない
研修を実施した 知識は得たが、判断の権限がない
マニュアルを配った 分量が多く、その場で参照できない

形式的な整備と、実質的な機能の差が、後に責任を分けることになります。

機能する体制に必要な四つの要素

一、判断基準 ── 現場がその場で判定できる

抽象的な定義を配っても、現場は判断できません。必要なのは、自社の業務で実際に起こりうる行為を並べ、それぞれについて「これは通常の対応」「これは要注意」「これは即エスカレーション」と色分けした一覧です。

作り方は単純です。過去一年間に実際に起きた事案を十件ほど集め、三段階に分類してください。抽象的な定義より、自社の実例のほうが、現場ははるかに理解できます。

二、記録 ── 対応が形に残る

様式がなければ現場は書きません。日時、相手の発言、当方の対応、従業員への影響。この四項目が入った様式を一つに統一してください。

このとき重要なのが、選択式を中心に構成することです。自由記述だけの様式は、忙しい日ほど書かれません。そして、忙しい日ほど問題は起きています。

三、エスカレーション ── 誰がいつ引き取るか

現場が事案を抱え込む構造を断つための仕組みです。多くの企業で、ここが最も弱くなっています。「困ったら上長に相談してください」という指示は、実質的に現場に判断を委ねているのと同じです。

必要なのは、条件に該当したら現場の判断を待たずに上位者が引き取る、という設計です。詳細は次項で述べます。

四、外部連携 ── 法的措置への接続先

どの段階で誰に相談するかを、事前に決めておいてください。事案が起きてから相談先を探すと、経緯の説明だけで時間が過ぎます。

  • 社内の法務・総務のどこが窓口になるか
  • 外部の専門家(弁護士・行政書士・社労士)の連絡先
  • 所轄警察署への事前相談の有無
  • 業界団体での情報共有の枠組み

エスカレーション基準の作り方

四要素のうち、最も効果が大きく、かつ最も整備されていないのがこれです。

三段階で設計する

段階 状態 対応者 行うこと
段階1 通常の苦情対応 現場担当者 通常対応。簡易な記録
段階2 許容範囲を超えつつある 現場責任者 責任者が交代。詳細な記録。対応時間の打ち切り
段階3 法的措置の検討段階 本部・経営層 現場から引き取る。外部連携の判断

段階を上げる条件を数値で決める

「ひどい場合は上長へ」では現場は判断できません。時間、回数、行為の種類の三軸で、条件を具体化してください。

  • 時間 ── 一回の通話または対面での対応が60分を超えたら段階2
  • 回数 ── 同一の件について、同一週に3回目の接触があったら段階2
  • 回数 ── 同一の件が1か月以上継続したら段階3
  • 行為 ── 身体への危害、その恐れがある場合は即段階3
  • 行為 ── 従業員個人への言及、勤務状況の詮索があれば即段階3
  • 行為 ── SNSへの投稿予告があれば即段階2

数値は自社の業務に合わせて調整して構いません。重要なのは、現場が「これは我慢すべきか」を判断しなくてよい状態を作ることです。判断させている限り、多くの従業員は我慢を選びます。

記入例

【エスカレーション基準(○○店)】

段階1 → 段階2 に上げる条件(いずれか一つ)
□ 対応時間が60分を超えた
□ 同一件で同一週に3回目の接触
□ 大声・怒号があった
□ SNSへの投稿を予告された

段階2 → 段階3 に上げる条件(いずれか一つ)
□ 身体への危害、またはその恐れ
□ 従業員個人の氏名・勤務状況への言及
□ 同一件が1か月以上継続
□ 退去要請に応じない

※ 条件に該当した時点で、現場担当者は判断を待たずに責任者へ引き継ぐこと。
※ 引き継いだ判断について、事後に責任を問わない。

最後の二行が最も重要です。これがないと、現場は基準に該当しても引き継ぎません。「大げさだと思われるのではないか」という懸念が、常に働くためです。

記録の運用をどう定着させるか

書かせるのではなく、書ける様式にする

記録が続かない原因は、現場の意識ではなく様式にあります。自由記述の報告書は、必ず形骸化します。

  • 媒体、対応時間、段階の判定はチェックボックスで
  • 自由記述は「相手の発言」と「従業員の状態」の二項目のみ
  • 1件あたり3分以内で書き終わる分量に収める
  • 紙ではなく、スマートフォンから入力できる形が理想

蓄積すると見えてくるもの

記録がたまると、傾向が見えます。特定の時間帯、特定の業務、特定の店舗、特定の顧客に偏っていることが分かります。この情報は、対策の優先順位を決める材料になります。

つまり記録は、義務の履行を証明するものであると同時に、改善のための資料でもあります。この二面性を社内で共有すると、記録を残す動機づけがしやすくなります。

法的措置への接続をあらかじめ決めておく

段階3に至ったら何をするか

その場で検討を始めるのではなく、選択肢を事前に用意しておいてください。

手段 主な目的 決裁の目安
書面での警告 行為の是正 部門長
出入り禁止・取引停止 関係の遮断 部門長〜役員
刑事告訴 刑事責任の追及 役員
損害賠償請求 金銭的責任の追及 役員

決裁権者を事前に決めておかないと、実際の場面で「誰が決めるのか」から議論が始まります。その間に、被害は続きます。

従業員個人が被害者の場合

脅迫、侮辱、暴行といった類型では、被害者は従業員本人です。会社が代わって手続を進めることはできません。

この場合、会社としては、本人が手続を選べる状態を作ることが役割になります。費用の扱い、就業時間中の対応、専門家の紹介。これらを規程に落とし込んでおいてください。

研修を機能させる

研修を実施した企業は多いのですが、実施したことが目的化しているケースが目立ちます。現場が動けるようになったかどうかが基準です。

伝えるべきは知識ではなく判断

法律の解説をしても、現場は動けるようになりません。必要なのは、「この場面ではこうする」という具体的な行動です。

よくある研修内容 現場が求めている内容
カスハラの定義と背景 自社で起きた実例と、その分類
関連法令の解説 どの段階で上長を呼んでよいか
望ましい応対の心構え 通話を打ち切ってよい基準
事例のグループワーク 通報するときに何と言うか

経営層が話す

内容以上に効くのが、誰が話すかです。「会社としてあなたたちを守る」というメッセージは、外部講師や人事部ではなく、経営層が直接伝えたときに最も届きます。時間は五分で構いません。

管理職向けを別に行う

現場が動けない原因の多くは、直属の上長にあります。「大げさだ」「もう少し様子を見よう」という反応が一度でもあれば、以後、報告は上がってきません。管理職に対しては、報告を受けた際にどう対応すべきかを、別途伝えてください。

一枚にまとめて配る

研修資料は保管されますが、参照されません。判断基準、エスカレーションの条件、通報時の伝え方。この三つを一枚にまとめ、各自が携帯できる形で配ってください。実務で使われるのは、この一枚だけです。

規程・マニュアルに落とし込む

体制を継続させるには、文書化が必要です。人が入れ替わっても運用が残るようにしてください。

何を、どの文書に書くか

内容 記載先
会社としての基本方針 方針文書(対外公表も検討)
従業員の義務と権利、通報の権限 就業規則または個別規程
判断基準、エスカレーション条件 対応マニュアル
記録の様式と保存期間 対応マニュアル・文書管理規程
法的措置の選択肢と決裁権者 対応マニュアル・決裁規程
従業員個人が被害者の場合の支援 個別規程

マニュアルの分量

詳細に書くほど使われなくなります。全体で十数ページに収め、現場が参照するのは冒頭の一枚だけで足りる構成にしてください。詳細な解説は付録として分離します。

見直しの周期

作って終わりにせず、半年に一度は記録を集計して見直してください。実際に起きた事案が基準に合っていなければ、基準のほうを直します。記録があれば、この作業は一時間で終わります。

社労士・弁護士・行政書士の役割分担

社会保険労務士 弁護士 行政書士
就業規則・雇用管理上の措置
方針の策定
対応マニュアル・規程の作成
従業員向け研修
警告書・通知書の作成
告訴状の作成
相手方との交渉・示談
訴訟の代理

すでに社労士に依頼している企業でも、実行フェーズでは別途の手当てが必要になります。就業規則の整備と、実際に相手方へ出す書面の作成は、別の作業です。

逆に、すべてを弁護士に依頼すると費用が大きくなります。書面の作成とマニュアルの整備は行政書士、交渉と訴訟は弁護士、雇用管理上の措置は社労士。この分担が、費用面では最も効率的です。

施行後の追いつき方

すでに施行日を過ぎている場合、優先順位は次のとおりです。

  1. エスカレーション基準を作る(最優先。数値で、一枚に)
  2. 記録の様式を統一する(選択式中心、3分で書ける分量)
  3. 外部の相談先を決める(連絡先を明記して周知)
  4. 判断基準の一覧を作る(自社の実例10件から三段階に分類)
  5. 研修で上記を周知する(知識ではなく、運用を伝える)

方針の策定や窓口の設置が未了の場合は、それらが先です。ただし、方針だけを作って止まると、冒頭に述べた「形式的には対応済み」の状態になります。同時に進めてください。

よくある質問

小規模な事業所ですが、どこまでやる必要がありますか

義務の対象に規模による区別はありませんが、講じるべき措置の具体的な内容は、事業の規模や実態に応じて考えられます。従業員が数名の事業所であれば、詳細な規程よりも、「この状況になったら経営者が引き取る」という基準が明確であることのほうが重要です。

相談窓口は外部に委託してもよいですか

可能です。ただし、外部窓口だけを設置して社内での対応が定まっていないと、相談が上がってきた後に動けません。窓口の設置と、その後の対応フローはセットで設計してください。

顧客に対して、方針を公表すべきでしょうか

公表している企業が増えています。効果としては、悪質な要求に対する事前の抑止と、従業員が「会社の方針として」断れるようになることの二つがあります。公表する場合は、正当な苦情は引き続き受け付ける旨を必ず併記してください。

取引先の担当者が問題を起こしている場合はどうすればよいですか

顧客等には取引先の担当者も含まれます。この場合、相手企業に対して担当者の変更を求めるという選択肢があります。会社間の関係は維持したまま、問題のある接触だけを断つ形になり、実務上は最も摩擦の少ない解決になることがあります。

窓口を機能させる

相談窓口は設置されているが使われていない、という状態が非常に多く見られます。原因は明確です。

使われない三つの理由

  • 相談すると自分の仕事が増えると思われている
  • 相談したことが直属の上長に伝わることを懸念している
  • 何を相談してよいのか分からない

相談したら業務が減る設計にする

最も効果的な対策がこれです。相談を受けた時点で、その案件を窓口側が引き取る。相談者に資料の作成や説明を求めない。この設計にすると、相談は上がってくるようになります。

逆に、相談した従業員に「経緯をまとめて提出してください」と求めると、以後、相談は止まります。負担が増えるためです。

匿名での相談を可能にする

直属の上長を経由しない経路を用意してください。小規模な事業所では完全な匿名化は難しいものの、「まず経営者に直接伝えてよい」という経路があるだけで違います。相談内容を誰に共有するかを、相談者が選べる形にしておくことも有効です。

相談の例を示す

「どんなことでも相談してください」では、何を相談してよいか分かりません。「こういう場合は相談してください」という具体例を三つか四つ示してください。前掲のエスカレーション条件を、そのまま相談の目安として使えます。

中小企業向けの最小構成

従業員が十数名規模の事業所で、専任の担当を置けない場合の最小構成を示します。これだけでも、何もしない状態とは大きく違います。

用意するもの(三点)

  1. A4一枚の判断基準表 ── 自社で起きた実例を、緑・黄・赤の三段階に分類したもの
  2. 対応記録の様式 ── 日時、相手の発言、当方の対応、従業員の状態の四項目。選択式中心
  3. エスカレーションの一文 ── 「赤に該当したら、判断を待たずに代表へ連絡すること。その判断について事後に責任を問わない」

決めておくこと(三点)

  1. 赤に該当した場合、誰が引き取るか(小規模事業所では代表者になることが多い)
  2. 外部の相談先はどこか(連絡先を明記して掲示)
  3. 記録をどこに保管するか(共有フォルダの場所を一つに)

やらなくてよいこと

詳細な規程の整備、大がかりな研修、専用システムの導入。これらは規模に応じて後から考えれば足ります。義務の履行という観点でも、実態に即した措置が講じられているかが問われます。形式を整えることより、実際に機能する三点を先に用意してください。

運用が定着しているかの確認方法

体制を作った後、実際に機能しているかを確認する方法です。半年に一度、次の五点を点検してください。

確認項目 機能している状態 していない状態
記録の件数 毎月一定数が起票されている ゼロ、または特定の店舗のみ
エスカレーションの実績 段階2以上が実際に発生している すべて段階1で完結している
相談窓口の利用 相談が上がってきている 半年間ゼロ件
記録の質 発言が直接引用されている 評価語のみ
現場の認識 基準を口頭で説明できる 資料の所在も分からない

このうち「記録がゼロ」「相談がゼロ」は、問題が起きていないことを意味しません。多くの場合、記録されていないだけです。ゼロという結果が出たら、まずそこを疑ってください。

義務化対応でよくある誤解

「うちは小規模だから対象外」

義務の対象に規模による区別はありません。労働者が一人でもいれば対策が求められます。ただし、講じるべき措置の具体的な内容は、事業の規模や実態に応じて考えられます。大企業と同じ体制を作る必要はありません。

「BtoBだから顧客等にあたらない」

顧客等には取引先の担当者も含まれるとされています。一般消費者と接点のない事業者であっても、対象外ではありません。

「対面での接客がないから関係ない」

対面に限られず、電話やSNSを通じた言動も対象とされています。コールセンター、オンラインでのサービス提供、リモートでの業務いずれも対象になります。

「厳しく対応するとクレームを受け付けないことになる」

指針は、正当な苦情や要望など社会通念上許容される範囲の申入れは該当しないことを明示しています。カスハラ対策と、顧客の声を受け止めることは両立します。むしろ、線引きが明確なほうが、正当な苦情への対応に集中できます。

「方針を公表すると顧客が離れる」

公表している企業は増えています。公表の際に、正当なご意見は引き続き承る旨を併記すれば、通常の顧客に不利益はありません。むしろ、従業員が「会社の方針として」断れるようになる効果のほうが大きいといえます。

施行後に問われるのは「記録」

義務を果たしているかどうかが問題になる場面で、判断材料になるのは記録です。方針や規程は「準備していた」ことを示すにすぎません。

何が残っていればよいか

  • 方針を策定し、周知した記録(周知の方法と日付)
  • 研修の実施記録(日付、対象者、内容)
  • 相談窓口の設置と周知の記録
  • 個別事案の対応記録(申告から対応までの経過)
  • エスカレーションが機能した記録
  • 外部の専門家に相談した記録

最も重要なのは四つ目

従業員から申告があり、会社がそれを受けて何をしたか。この経過が残っていることが決定的です。逆に、方針や研修の記録だけがあって個別の対応記録がない場合、「準備はしていたが機能していなかった」と評価されかねません。

記録の保存期間

事案が終結してからも、一定期間は保管してください。従業員が後になって労災の申請や損害の賠償を検討する場面では、会社側の記録が会社を守る側に働くこともあります。

他のハラスメント対策との関係

すでにパワハラやセクハラの体制を整備している企業では、それを流用できる部分があります。

流用できるもの

  • 相談窓口(担当者と受付経路)
  • 記録の保管ルールと文書管理
  • 研修の実施体制
  • 就業規則における基本的な枠組み

流用できないもの

  • 判断基準 ── 相手が社外の者である点で、判断の要素が異なります
  • エスカレーション ── 対応の緊急性が高く、その場での判断が必要になります
  • 事後の措置 ── 社内の懲戒ではなく、対外的な法的措置になります
  • 証拠の性質 ── 録音や防犯カメラなど、収集の方法が異なります

特に三つ目が本質的な違いです。社内のハラスメントは懲戒処分という手段がありますが、カスハラの相手は社外の者であり、会社の指揮命令が及びません。だからこそ、外部の手続への接続をあらかじめ決めておく必要があります。

体制整備を依頼する場合

当事務所で対応できること

  • 判断基準表の作成(自社の実例を三段階に分類)
  • エスカレーション基準の設計と文書化
  • 対応記録の様式作成
  • 対応マニュアルの作成
  • 従業員向け・管理職向けの研修
  • 顧客向け方針文書の作成

他の専門家と分担するもの

就業規則の改定は社会保険労務士、個別事案の交渉・訴訟は弁護士の業務です。すでに顧問がいらっしゃる場合は、その体制を活かしたまま、実行フェーズの部分だけをお引き受けすることも可能です。

期間の目安

判断基準表と記録様式であれば、二〜三週間程度です。マニュアル全体の整備を含む場合は、一〜二か月を見ておいてください。過去の事案の洗い出しにご協力いただく必要があります。

まず何から相談すればよいか

現在の整備状況をお聞かせください。方針だけがある状態なのか、記録の様式まであるのか、それによって着手すべき箇所が変わります。何もない状態からでも、優先順位をつけて進められます。

経営層に説明するときの整理

体制整備の必要性を社内で通すために、次の三つの観点を用意しておくと話が早くなります。

一、法令上の義務であること

2026年10月1日から、カスタマーハラスメント防止措置は事業主の義務です。「やったほうがよいこと」ではなく「やらなければならないこと」として提示してください。議論の性質が変わります。

二、コストで示すこと

対応に要した従業員の時間を人件費に換算し、離職が発生した場合の採用・教育コストを加えてください。体制整備にかかる費用より、放置した場合のコストのほうが大きいことは、多くの場合、数字で示せます。

三、採用と定着への影響

理不尽な扱いを受けても会社が何もしない、という状態は、被害を受けた本人だけでなく、それを見ている全員に伝わります。人手不足の業種であれば、この影響は無視できません。

この三つを一枚にまとめて提示すれば、決裁は通りやすくなります。感情論ではなく、義務・コスト・人材の三点で説明することがポイントです。

まとめ:体制チェックリスト

  1. 自社の実例に基づく判断基準の一覧があるか
  2. 記録の様式が統一され、3分で書ける分量になっているか
  3. エスカレーション基準が、時間・回数・行為の三軸で数値化されているか
  4. 引き継いだ判断について事後に責任を問わない旨を、明文で示しているか
  5. 段階3に至った場合の選択肢と決裁権者が決まっているか
  6. 外部の相談先が決まり、周知されているか
  7. 従業員個人が被害者となる場合の会社の支援内容が、規程に落ちているか

このうち四つ目が抜けている企業が非常に多いという印象です。基準を作っても、それを使った従業員が守られなければ、基準は使われません。体制の実効性は、この一文の有無で決まると言っても過言ではありません。

行政書士に依頼できること・できないこと

当事務所では、カスタマーハラスメントへの対応について、次の範囲でご支援しています。

  • 対応できること:警告書・内容証明・出入り禁止通知書・告訴状などの書類作成、社内規程および対応マニュアルの作成、従業員向け研修の実施
  • 対応できないこと:相手方との交渉の代理、示談、訴訟の代理(いずれも弁護士の業務となります)

案件の性質によっては、当初から弁護士をご紹介いたします。まずは現在の状況をお聞かせください。ご相談は無料です。

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